ランニングで右足を着くと腰が痛む|40代男性・筋膜性腰痛の症例
2026年09月25日
「走っていると右足を着いた瞬間に右腰が痛む」
このような症状があると、腰そのものに問題があるように感じるかもしれません。
今回ご紹介するのは、2〜3年前からデスクワークが増え、運動量が減った頃から、ランニング時の右足接地で右腰に痛みを感じるようになった40代男性の症例です。
身体を評価したところ、腰だけでなく、右股関節周囲の筋力や片脚で身体を支える能力、右脚へ荷重した際の動作にも左右差がみられました。
そのため今回は、腰への施術だけではなく、ランニング時に右脚で安定して身体を支えられる状態を目指して、施術とセルフトレーニングを組み合わせています。
症例概要
**年代・性別:**40代男性
**主な症状:**ランニング時の右腰部痛
目標:
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腰の痛みを軽減する
-
痛みを気にせずランニングへ復帰する
2〜3年前からデスクワークの時間が増え、それに伴って運動量も減少。
その頃からランニングをすると、右足を地面についた際に右腰へ痛みを感じるようになりました。
日常生活では明確な再現痛が少なく、実際に走った際に症状が現れることが特徴でした。
身体の状態を評価
1.前屈動作
FFD(Finger Floor Distance:立った状態で前屈し、指先と床までの距離を確認する評価)では制限がみられました。
前屈動作は腰だけでなく、
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股関節
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骨盤
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ハムストリングス
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背部
など複数の部位が関係します。
そのため、腰の動きだけではなく全身の柔軟性や動作を確認していきました。
2.右トレンデレンブルグ徴候が陽性
右脚で身体を支えた際に、トレンデレンブルグ徴候がみられました。
トレンデレンブルグ徴候とは、片脚立ちをした際に骨盤を安定させる能力を確認する評価です。
特に中殿筋など、股関節周囲で身体を支える筋肉の働きが関係します。
ランニングでは左右の脚で交互に片脚支持を繰り返すため、片脚で身体を支える能力は重要なポイントになります。
3.右フロントランジで腰痛を再現
右脚を前に出すフロントランジでは、右腰に痛みが出現しました。
さらに右脚へ十分に体重を乗せきれず、右側から荷重が抜けるような動作が確認されました。
実際のランニングでも右足接地時に痛みが出ているため、右脚で身体を受け止める際の動作は今回の症状を考えるうえで重要な評価ポイントと考えました。
理学検査
以下の検査を行いました。
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SLRテスト:陰性
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FNSテスト:陰性
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ケンプテスト:陰性
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トーマステスト:陽性
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HBD:陰性
SLRテストは脚を持ち上げ、坐骨神経などへの刺激によって症状が誘発されるかを確認する検査です。
FNSテストは大腿部前面に関連する神経症状の有無を確認する検査です。
今回はSLR・FNSともに陰性で、これらの検査では明らかな神経症状は誘発されませんでした。
一方、トーマステストでは陽性所見がみられ、股関節前面、特に腸腰筋周囲の柔軟性低下が考えられました。
筋力評価
MMT(徒手筋力検査)では以下の左右差がみられました。
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右側では腸腰筋・中殿筋ともに左側より筋力が低い結果となりました。
中殿筋は、歩行やランニングで片脚になった際に骨盤を安定させる重要な筋肉です。
今回、
右中殿筋の筋力低下
+右トレンデレンブルグ徴候
+右ランジでの荷重回避
という複数の所見が一致していました。
このことから、右脚で身体を支える能力の低下が、ランニング時の右腰部への負担に関連している可能性を考えました。
腸腰筋の柔軟性もチェック
タイトネステストでは、腸腰筋の緊張・柔軟性低下が確認されました。
腸腰筋は腰椎から骨盤を通り、大腿骨へつながる筋肉で、股関節を曲げる動作や姿勢の維持に関係しています。
デスクワークなど座っている時間が長くなると股関節を曲げた姿勢が続くため、股関節周囲の柔軟性や機能にも影響することがあります。
ただし、デスクワークや腸腰筋の硬さだけが腰痛の原因になるわけではありません。
今回は、柔軟性・筋力・片脚支持・ランジ動作などを総合して身体の状態を評価しています。
今回の症状について考えたこと
今回のポイントは、「腰が痛いから腰だけを見る」のではなく、ランニングで痛みが出る瞬間の動きを確認することでした。
ランニングでは、足が地面についた瞬間に身体へ加わる力を下肢全体で受け止めます。
その際には、
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足関節
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膝関節
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股関節
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骨盤
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体幹
が連動して身体を支える必要があります。
今回の患者さんでは、右脚で身体を支えたときに骨盤の安定性が低下し、フロントランジでも右脚への荷重を避ける動きが確認されました。
さらに右中殿筋・腸腰筋の筋力にも左右差がありました。
これらが組み合わさることで、ランニング時の右足接地で腰部に負担が集中していた可能性があります。
もちろん、これらの所見だけで腰痛の原因を一つに断定することはできません。
そのため施術後の変化だけでなく、実際にランニングした際の症状がどう変化するかまで確認することが重要です。
実施した施術・運動
今回は身体評価をもとに、
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骨盤矯正
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ハイボルト
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腸腰筋周囲への筋膜リリース
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クラムシェルの指導
を行いました。
ハイボルト
高電圧の電気刺激を利用し、症状のある部位や関連する筋肉へアプローチしました。
腸腰筋周囲への筋膜リリース
柔軟性低下がみられた股関節前面に対し、動きやすさを改善する目的でアプローチしました。
クラムシェル
クラムシェルは、横向きになって膝を曲げ、両足を合わせたまま上側の膝を開くトレーニングです。
主に中殿筋など股関節外側の筋肉を使います。
今回は、ランニング時の片脚支持能力を改善していくためのセルフトレーニングとして指導しました。
施術後の変化
施術後は身体の可動域が向上。
施術前には痛みが出ていた右フロントランジでも、その場では痛みが出なくなりました。
ただし今回の主症状は「ランニング中の右足接地」で起こります。
院内でランジ動作が改善したからといって、ランニング時の痛みまで改善したとは判断できません。
そのため次回までに実際にランニングを行っていただき、
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右足接地時に痛みが出るか
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痛みの強さが変化したか
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走れる距離に変化があるか
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走った後に症状が残るか
などを確認していく予定です。
今後の方針
今後はランニング時の症状を確認しながら、必要に応じて施術だけではなく運動療法も進めていきます。
特に今回の症例では、
「身体を動かしやすくする」ことと「動かした身体を支えられるようにする」こと
の両方が重要と考えています。
次回は体幹を支える筋肉の状態を確認するため、楽トレの検査も予定しています。
最終的には、痛みを一時的に軽減するだけでなく、ランニング時に右脚で安定して身体を受け止められる状態を目指します。
ランニングで腰が痛む方へ
ランニング中に腰が痛む場合でも、問題が腰だけにあるとは限りません。
例えば、
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股関節周囲の筋力
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股関節の柔軟性
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片脚でのバランス
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骨盤・体幹の安定性
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足の接地方法
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ランニングフォーム
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運動量の変化
など、複数の要素が関係している可能性があります。
特に「右足を着いたときだけ痛い」「走ると痛いけれど普段は痛くない」といった症状では、ベッド上での検査だけでなく、実際に身体へ体重をかけた状態で動作を評価することが重要です。
同じ腰痛でも身体の状態や原因となる要素は一人ひとり異なるため、自分の身体がどの動作で崩れているのかを確認したうえで、施術やトレーニングを選択することが大切です。
よくある質問
Q1.ランニングで腰が痛むのは筋力不足が原因ですか?
筋力低下が関係するケースはありますが、それだけが原因とは限りません。
股関節の柔軟性、ランニングフォーム、骨盤・体幹の安定性、トレーニング量なども含めて評価する必要があります。
Q2.腰が痛い場合でもお尻のトレーニングは必要ですか?
症状や身体評価によります。
ランニングでは中殿筋などの股関節周囲筋が骨盤を安定させるため、評価によって必要と判断した場合にはトレーニングを行うことがあります。
Q3.施術後に痛みがなくなれば、そのまま走って大丈夫ですか?
施術室で痛みがなくても、ランニングではより大きな負荷が身体に加わります。
短い距離や低い強度から確認し、症状の変化を見ながら段階的に戻していくことが重要です。
Q4.デスクワークは腰痛と関係しますか?
長時間同じ姿勢を続けることや運動量が減ることは、腰や股関節周囲の動き・筋力に影響する場合があります。
ただし「デスクワーク=腰痛の原因」と一概に決めることはできません。
Q5.ランニングフォームも確認したほうがいいですか?
走っているときにだけ症状が出る場合、ランニング動作の確認は有用です。
片脚支持、骨盤の動き、接地、身体の傾きなどを確認することで、症状に関連する動作を見つけられる場合があります。
Q6.腰痛がある場合、どのような症状なら医療機関を受診すべきですか?
強いしびれや筋力低下、排尿・排便の異常、発熱、安静にしていても強い痛みが続く場合、外傷後に強い痛みがある場合などは、運動や整体よりも医療機関での診察を優先してください。
まとめ
今回の症例では、ランニング時の右足接地で起こる右腰痛に対して身体全体を評価した結果、
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右トレンデレンブルグ徴候
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右フロントランジでの疼痛と荷重回避
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右中殿筋の筋力低下
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右腸腰筋の筋力低下
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腸腰筋の柔軟性低下
などが確認されました。
施術後には右フロントランジ時の痛みがその場では消失しましたが、今回のゴールはランニング復帰です。
そのため今後は、実際に走った際の症状を確認しながら、必要に応じて施術・セルフケア・筋力トレーニングを組み合わせていきます。
ランニング中の腰痛では、痛い場所だけではなく、「どの脚で、どの瞬間に、身体がどのように動いているのか」まで評価することが重要です。
この記事の執筆者:中澤 武士(なかざわ たけし)
保有資格:
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柔道整復師(国家資格)
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NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
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NASM-PES(パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト)
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中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)
プロフィール:
スポーツ現場から医療分野まで幅広く携わる実践型トレーナー・施術者。
これまでに、大相撲の横綱をはじめとする幕内力士、新極真空手日本代表、プロボクサー、デフフットサル日本代表、競輪選手、実業団選手、市民ランナーなど多様な競技者をサポート。
施術による痛みの改善から競技復帰、さらにはパフォーマンス向上まで一貫したサポートを行うことを強みに、学生アスリートからトップ選手まで高い信頼を得ている。
現在は、江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」のエリアマネージャーとして、現場での施術・トレーニング指導に従事。スタッフ教育にも力を入れ、後進トレーナーの育成にも積極的に取り組んでいる。
区の行政事業における体操教室、トレーナー専門学校での学生教育、同業トレーナーへの指導、社内研修での講師など、教育・普及活動にも幅広く参加。
「根本改善・再発防止・パフォーマンス向上」を掲げ、身体の本質を見極める全身アプローチを信条に、多くの利用者が長く健康で動ける身体づくりをサポートしている。
この記事の監修者:鮫島 洋一(さめしま よういち)
保有資格:
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
- JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
- NASMフィットネスエデュケーター
プロフィール:
メディカルトレーナーとして、甲子園大会や世界陸上など国内外のスポーツ現場に帯同。トップアスリートから成長期の学生アスリートまで、競技復帰・再発防止・パフォーマンス向上を見据えた施術・指導を行っている。
スポーツ障害に対する専門的な視点と、根本改善を重視した全身アプローチで、多くの競技者のサポートに携わってきた。
現在は江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」を運営し、地域の運動愛好家・学生アスリートからの信頼も厚い。また、トレーナー教育のための専門学校のコース長として教育の現場でも活躍している。









