スポーツ外傷・障害


- 練習で捻挫してしまった、どうしても試合に出たい
- ジャンプで着地したら肉離れした、早く治したい
- スポーツに早く復帰したい
- スポーツで怪我をしない身体作りをしたい
- 早くボールを投げれるようになりたい
「なんとなく痛い」を放置しない。スポーツのケガには“突然”と“じわじわ”の両方があります。
スポーツに取り組む中で、肩・肘・膝・足首などに起こるケガは、大きく「スポーツ外傷」と「スポーツ障害」に分けられます。
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スポーツ外傷:転倒・接触・着地ミスなど、急激な外力によって瞬間的に起こるケガ(例:捻挫、骨折、靭帯損傷など)
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スポーツ障害:ジャンプや投球などの反復動作によるオーバーユースで、徐々に悪化する損傷(例:腱炎、疲労骨折、インピンジメントなど)
これらのケガは、競技種目・プレースタイル・年齢・筋力や柔軟性などの身体的特徴によって起こり方が異なります。
たとえば、野球選手に多いのは肩や肘の障害、バスケットボール選手なら膝や足首の外傷が目立ちます。
同じ膝でも、ジャンパー膝のように繰り返しの負荷で痛める場合もあれば、前十字靭帯損傷のように一度の衝撃で大ケガに至ることもあります。
このページでは、スポーツで起こりやすい代表的な外傷・障害を「部位別」に分類し、原因・症状・注意点をわかりやすく紹介します。
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どんなケガが起きやすいのか?
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放置するとどうなるのか?
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どんな予防策・治療法があるのか?
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整骨院と整形外科の役割はどう違うのか?
こうした疑問に答えながら、早期対応・再発予防・競技復帰までを視野に入れた正しい情報を提供していきます。
江東区大島・住吉にあるサモーナスポーツ整骨院では、競技者や部活動生を中心に、ケガの評価・施術・トレーニング・リハビリまでをトータルに対応しています。
「何となく痛むけど、我慢している」
「最近動きがぎこちない」
その違和感、実はケガのサインかもしれません。
スポーツを続けるすべての方に、部位ごとの理解と正しい対処法をお伝えします。
肩に多いスポーツ障害・外傷
腱板損傷(腱板断裂)とは?
腱板損傷とは、肩関節の深部に存在する「腱板(ローテーターカフ)」と呼ばれる筋群の腱が、損傷・断裂する障害です。
腱板は以下の4つの筋肉で構成され、腕を安定させながら動かすために不可欠な役割を担っています。
◆ 腱板を構成する筋肉
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棘上筋(きょくじょうきん)
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棘下筋(きょくかきん)
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小円筋(しょうえんきん)
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肩甲下筋(けんこうかきん)
この腱板が加齢による変性、繰り返しの使いすぎ、または転倒・打撲などの急激な外力によって損傷すると、肩の運動や安定性が著しく低下します。
主な原因と発症メカニズム
腱板損傷には以下のような原因が考えられます。
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加齢性変性(40代以降に増加)
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繰り返される肩の使いすぎ(オーバーユース)
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野球・テニス・バレー・体操などの反復動作
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肩への外傷・転倒による急激な牽引や圧迫
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肩峰下インピンジメント症候群の進行による二次的損傷
主な症状
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腕を横や前に挙げるときに肩の外側や深部に痛みが出る
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夜間痛があり、寝返りで目が覚めることもある
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動かすと引っかかり感や「ゴリッ」とした異音
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完全断裂の場合、腕を自力で挙げられなくなる
好発スポーツと対象者
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野球(投手)
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テニス(サーブ・スマッシュ)
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バレーボール(スパイク・ブロック)
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体操、重量挙げ、クロスフィット系競技
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高齢者でも、軽い外傷で断裂を起こす場合あり
注意点と合併症
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放置すると損傷が進行し、完全断裂や可動域制限、肩の筋萎縮に発展する可能性あり
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インピンジメント症候群や石灰性腱炎などと鑑別が必要
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MRIでの画像診断が有効
肩峰下インピンジメント症候群とは?
肩峰下インピンジメント症候群は、肩を挙げる際に、肩の骨(肩峰)と腕の骨の間にある腱板や滑液包が挟まれて炎症を起こす障害です。
肩の狭い空間(肩峰下スペース)に何らかの原因で圧迫が生じ、摩擦や炎症、腱の損傷を引き起こします。
この状態が進行すると、腱板損傷や断裂、慢性的な肩痛の原因にもなります。
発症メカニズムと原因
肩峰下で構造物が挟まる(インピンジメント)理由は、複合的です。
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肩甲骨や肩峰の形状異常(先天的・加齢変化)
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腱板や滑液包の肥厚・炎症
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肩関節周囲筋の筋力低下や柔軟性不足
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姿勢不良(猫背・巻き肩など)による肩甲骨の動きの乱れ
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オーバーヘッド動作の繰り返し(投球、スパイク、サーブなど)
主な症状
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肩を上げたときに肩の前方または外側に痛みが出る
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特に60~120度あたりで痛みが強くなる(ペインフルアークサイン)
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夜間痛があり、横向きで寝ると痛みが増す
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動作開始時に肩が引っかかるような感覚
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肩の可動域が徐々に制限される
好発スポーツと対象者
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野球(投球動作)
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バレーボール(スパイク・ブロック)
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水泳(クロール・バタフライ)
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テニス(サーブ)
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重量挙げ・クロスフィット系競技
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中高年のデスクワーカー(日常生活の動作でも発症)
リスクと予後
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放置すると腱板への圧迫が慢性化し、腱板損傷・断裂に進行することもあります
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動作フォームの崩れや、肩甲骨・体幹の安定性不足が背景にあるケースも多く、全身的な評価が必要
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構造的な問題が大きい場合は、手術(肩峰形成術など)を検討することもあります
投球障害肩(野球肩)とは?
投球障害肩とは、ボールを投げる際の繰り返し動作によって、肩の関節や筋肉・靭帯・軟骨などにストレスが蓄積されて起こる痛みや機能障害の総称です。
特に成長期の野球選手や投手に多く見られ、放置すると慢性化や構造的損傷に発展するリスクがあります。
原因とメカニズム
投球動作は、肩関節にとって非常に負担の大きい動きです。特に「リリース」や「フォロースルー」時には、肩の前方構造が引き伸ばされ、後方構造が圧迫されるため、さまざまな障害が発生します。
原因の例:
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過度な投球数・連投・休養不足
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肩周囲の筋力不足やアンバランス
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肩甲骨や股関節の可動性不足による投球フォーム不良
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成長期の骨や関節の未成熟状態での過負荷
投球障害肩に含まれる代表的な傷害
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上腕骨近位骨端線離開(リトルリーガーズショルダー)
→ 成長軟骨の損傷。小中学生に多い。 -
SLAP損傷(関節唇損傷)
→ 肩関節の中にある軟骨(関節唇)が剥がれる・断裂する状態。 -
腱板炎・腱板損傷
→ 腱板(肩の安定に関わる筋群)の疲労・摩耗・炎症。 -
関節包や関節の過可動性・不安定症
これらは単独で起きることもあれば、複合的に発症することもあります。
主な症状
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投球動作時の肩の痛み(特にリリースやフォロースルーで)
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球速やコントロールの低下
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投げたあとに肩がだるく重くなる
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動かすと「引っかかり感」や「違和感」がある
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肩の可動域が狭くなる
好発スポーツ・対象者
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野球(特に投手・捕手)
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ソフトボール
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テニス(サーブ・スマッシュ)
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ハンドボールなど、オーバーヘッド動作を多用する競技
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成長期〜高校・大学・社会人選手まで幅広く発症
注意点と予後
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痛みを我慢して投げ続けると、構造的な損傷が進行し、手術が必要になるケースもあります
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初期であれば、フォーム修正・筋力強化・投球制限などで改善が見込めます
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痛みのある間の無理な投球は絶対に避けるべきです
肩関節脱臼(反復性肩関節脱臼)とは?
肩関節脱臼とは、腕の骨(上腕骨の骨頭)が肩甲骨のくぼみ(関節窩)から外れる状態を指します。
最も一般的なのは「前方脱臼」で、腕を外側や後方に大きく開いた際に起こることが多く、スポーツ現場でも頻繁に見られる外傷のひとつです。
そして、脱臼を一度でも経験した人が再び脱臼を繰り返すようになる状態を**「反復性肩関節脱臼」**といいます。
原因と発生の仕組み
肩関節は構造上、非常に自由度が高く動く反面、不安定な関節でもあります。
そのため、以下のような要因で脱臼を起こすリスクが高まります。
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転倒やタックルなどの強い外力が肩にかかる接触プレー
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手を伸ばした状態での着地・転倒(スキー・スノボ等)
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投球やサーブ動作などの肩関節の過伸展
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関節唇(軟骨)や靭帯の損傷による関節の安定性低下
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若年層(10〜20代)の脱臼は再発率が特に高い
脱臼による損傷と後遺症
肩が脱臼すると、以下のような構造的損傷が起きることが多く、それが反復性につながります。
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関節唇損傷(バンカート損傷)
→ 関節を安定させる軟骨がはがれる -
骨欠損(ヒルサックス損傷)
→ 上腕骨に陥没したような傷ができる -
靭帯の伸長や断裂
→ 関節の保持力が著しく低下する
主な症状
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激しい肩の痛みと変形(肩の位置がずれる)
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自力で腕を動かせなくなる
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脱臼後は肩が抜けそうな不安定感が残る
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再脱臼を恐れて動作に制限がかかるようになる
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スポーツ時だけでなく、寝返りや日常動作でも外れるケースも
好発スポーツと対象者
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ラグビー・アメリカンフットボール・柔道・レスリング(強い衝撃を伴う)
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スキー・スノーボード・バスケットボール(転倒リスクあり)
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野球・バレーボール・テニス(肩関節の最大外旋が頻発)
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特に10代後半〜20代の男性アスリートに多い
注意点と治療選択
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初回の脱臼後、関節の構造が損傷しているかどうかの評価が非常に重要
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若年層でスポーツ復帰を目指す場合、早期に手術を検討する方が再発率を下げられるとされる
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非手術療法では、肩周囲の筋力強化と可動域制限の管理が重要
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MRIによる詳細な評価と専門医での診断が推奨される
肘に多いスポーツ障害・外傷
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)とは?
テニス肘とは、正式には**上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)**と呼ばれる、肘の外側にある骨の付近で起こる炎症性障害です。
手首を伸ばす筋肉(伸筋群)の腱が、肘の外側にある骨(外側上顆)に付着しており、この部分に繰り返しのストレスがかかることで、炎症や微細損傷が生じます。
テニスだけでなく、手首の使いすぎを伴う多くの動作で発症するため、スポーツだけでなく日常生活や仕事でも見られる障害です。
主な原因と発症メカニズム
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手首や肘を繰り返し使う作業(ラケットのスイング・パソコン作業・荷物の持ち上げなど)
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前腕の伸筋群(特に短橈側手根伸筋)の過負荷
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筋力不足・柔軟性低下・フォーム不良
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加齢により腱が変性しやすくなる中高年以降の層で多発
主な症状
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肘の外側(骨の出っ張り付近)に押すと痛い圧痛
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タオルを絞る・物を持つ・ドアノブをひねるなどで鋭い痛み
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手首の背屈動作で痛みが増す
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動かさなければ痛みは軽度または消失するが、動作で再発する
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慢性化すると、軽微な動作でも痛むようになる
好発スポーツと対象者
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テニス(特に片手バックハンド)
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ゴルフ(インパクト時の手首の返し)
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バドミントン・卓球などのラケット競技
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野球(バッティングや送球)
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クライミングや体操などの上肢を酷使する競技
また、以下のような非スポーツ活動でも発症します:
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パソコン作業・家事・育児・工具作業など
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中高年の主婦・デスクワーカー・職人などに多い
注意点とリスク
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無理に使い続けると炎症が悪化し、慢性疼痛に進行することも
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重度の場合、腱の部分断裂や石灰化が生じることもある
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握力低下・手首や肘の可動域制限を引き起こすケースも
鑑別が必要な他疾患
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上腕骨内側上顆炎(いわゆるゴルフ肘)
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肘関節内の関節障害や神経障害(例:橈骨神経障害)
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頸椎由来の放散痛(頸椎ヘルニアなど)
野球肘(上腕骨内側上顆障害・離断性骨軟骨炎)とは?
「野球肘」は、成長期の野球選手、特に投手に多く見られるスポーツ障害で、肘の内側・外側・後方にそれぞれ異なる損傷が起こります。
本記事では、特に頻度の高い「内側型」と「外側型(離断性骨軟骨炎)」の2つを中心に解説します。
【1】内側型:上腕骨内側上顆障害
◆ 概要
肘の内側にある上腕骨内側上顆に付着する筋や靭帯に、繰り返しの牽引ストレスがかかることで起こる障害です。成長軟骨が未完成な少年期に特に多く発生します。
◆ 主な原因
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投球時の加速期(リリース直前)にかかる強い牽引力
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フォームの崩れや過剰な投球数・休養不足
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肩・体幹・股関節などの連動性の欠如
◆ 主な症状
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肘の内側の痛み(投球時・投球後)
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圧痛や張り感
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痛みによる投球パフォーマンスの低下
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初期は軽度でも、進行すると骨端線離開や靭帯損傷に発展する
◆ 好発スポーツ
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野球(特にピッチャー)
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ソフトボール・クリケットなど投球動作を含む競技
【2】外側型:離断性骨軟骨炎(OCD)
◆ 概要
肘の外側にある上腕骨小頭に、繰り返しの衝突や圧迫がかかることで、軟骨とその下の骨が剥がれる障害です。放置すると骨の一部が遊離し、「関節ねずみ(関節内遊離体)」になるリスクがあります。
◆ 主な原因
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投球の際の前腕回外による衝突ストレス
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成長期に骨の血流が不安定な時期に過剰な負荷が加わること
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肩や股関節の柔軟性低下によるフォームの崩れ
◆ 主な症状
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肘の外側の痛み(投球時・バットスイング時)
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関節の引っかかり感、可動域制限
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肘のロッキング(突然動かなくなる)
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慢性化すると、日常生活でも痛みや動作制限が生じる
鑑別とリスク
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いずれの型も初期ではレントゲンで異常が見つかりにくいため、症状があれば早期に専門医の評価が必要
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成長軟骨の損傷や関節内遊離体は、手術が必要になる場合もあり
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再発防止には、フォームの見直し・投球制限・全身の連動強化が不可欠
肘関節脱臼・靭帯損傷とは?
肘関節脱臼とは、前腕の骨(橈骨・尺骨)が上腕骨との関節から外れてしまう外傷性の障害です。
同時に、関節を安定させる靭帯(特に内側側副靭帯:UCL)が損傷することも多く、スポーツ現場では重度のケガとして扱われます。
特に転倒やコンタクトによる肘への外力、または投球動作による繰り返しの牽引力で発生します。
発生原因とメカニズム
◆ 急性型(脱臼)
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転倒時に手をついた衝撃が肘に集中し、関節が脱臼
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スポーツ中のタックルや接触による肘の過伸展・回旋
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関節包・靭帯・軟骨の同時損傷を伴うことが多い
◆ 慢性型(靭帯損傷・不安定症)
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投球やサーブなどの反復動作による内側側副靭帯(UCL)へのストレス
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肘の「開き」が進行し、徐々に靭帯がゆるんで機能低下
主な症状
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激しい痛みと腫れ(脱臼時)
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肘の変形や「ズレた感じ」
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可動域の大きな制限、曲げ伸ばしできない
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靭帯損傷の場合は、投球時の内側の痛み・不安定感
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投球後に肘がだるくなる、力が入らないなどの違和感
好発スポーツと対象者
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ラグビー、柔道、レスリングなどの接触・転倒を伴う競技
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スキー・スノーボードでの転倒
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野球(特に投手)・ソフトボール・テニスなどの投擲・打撃競技
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特に成長期の選手や、オーバーユースの多い高校〜大学世代に多い
鑑別と合併症
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脱臼には**骨折、神経損傷(尺骨神経など)**が合併する場合がある
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靭帯損傷はMRIやストレス撮影で診断
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脱臼後の処置やリハビリが不十分だと、関節の不安定性・再脱臼・拘縮などの後遺症につながることも
注意点
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脱臼は緊急処置(整復)+固定+リハビリが重要
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靭帯損傷は保存療法でも改善が可能だが、野球投手などでは**トミー・ジョン手術(UCL再建術)**を要するケースも
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競技復帰には可動域・筋力・神経制御の段階的な回復が必要不可欠
股関節に多いスポーツ障害・外傷
グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)とは?
グロインペイン症候群とは、股関節の前面〜内側(鼠径部)にかけて慢性的な痛みが生じるスポーツ障害の総称です。
サッカー選手に非常に多く見られるため、別名「サッカー選手病」とも呼ばれます。痛みの部位・原因が多岐にわたるため、診断・治療が難しいことも特徴です。
発症原因とメカニズム
鼠径部は、股関節・骨盤・腹筋・内転筋・腸腰筋など、多くの組織が交差する複雑な部位です。
以下のような要因で、局所の組織が引き伸ばされたり圧迫されたりすることで痛みが発生します。
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キック動作・方向転換・切り返しによる繰り返しの牽引ストレス
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体幹や股関節の柔軟性・安定性不足
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片側への過負荷・筋バランスの不均衡
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急激なトレーニング量の増加
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スポーツ動作中の微細な組織損傷の蓄積
主な症状
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股関節の前面〜内側にかけての鈍痛・違和感
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特にボールを蹴る・方向転換・ダッシュ時に痛み
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初期はプレー可能だが、徐々に痛みが慢性化・強化
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片足立ち・筋力テスト・ストレッチで痛みが誘発される
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日常動作(階段・起立・歩行)でも違和感を伴うことがある
好発スポーツと対象者
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サッカー(特にMF・FWのキック動作が多いポジション)
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ラグビー・バスケットボール・陸上短距離など、切り返しの多い競技
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フィギュアスケートや体操など、可動域と軸の安定が要求される競技
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成長期〜20代の競技者に多く、男性アスリートにやや多い傾向
関連する障害と鑑別疾患
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内転筋炎・腸腰筋炎
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スポーツヘルニア(筋膜の損傷)
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股関節唇損傷・FAI(インピンジメント)
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恥骨結合炎(骨盤中央の炎症)
注意点とリスク
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「休めば治る」と放置すると、数か月〜1年以上長引くケースも
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原因が複数関節・筋にまたがるため、全身的な評価とアプローチが必要
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再発しやすく、復帰には柔軟性・筋力・体幹・股関節の連動強化が必須
股関節唇損傷(FAI:股関節インピンジメント症候群)とは?
股関節唇損傷とは、股関節の関節内にある「関節唇(かんせつしん)」と呼ばれる軟骨組織が損傷する障害です。
この関節唇は、大腿骨頭(太ももの骨の先端)と骨盤側のくぼみ(臼蓋)を安定させる“クッション”のような役割を果たしており、破損すると股関節の不安定感・引っかかり・痛みなどが生じます。
この損傷の主な原因のひとつが、**FAI(股関節インピンジメント症候群)**です。
FAI(股関節インピンジメント症候群)とは?
FAIは、股関節を深く曲げたりひねったりした際に、大腿骨と骨盤の骨が衝突し、関節唇を損傷する状態を指します。
2つのタイプがあります:
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カム型(大腿骨頭の形がいびつ)
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ピンサー型(骨盤側の覆いが深すぎる)
いずれも、構造的な問題と繰り返しの運動負荷が関節唇にダメージを与えることが特徴です。
主な症状
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鼠径部(股関節の前面)の深い痛みや引っかかり感
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股関節の屈曲・内旋・回旋動作で痛みが誘発される
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長時間の座位や車の乗り降りでの違和感
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股関節が「抜けるような感じ」や動かしにくさ
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可動域制限(特に深く曲げたり開いたりする動作)
好発スポーツと対象者
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サッカー・ラグビー・ホッケーなど切り返しの多い競技
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バレエ・体操・フィギュアスケートなど開脚や股関節の可動域が広い動作
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格闘技・柔道・レスリングなど深くしゃがむ・回旋する動きが多い競技
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成長期〜若年層の競技者、または長年の競技経験者に多い
原因とリスク因子
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先天的な骨の形態異常(FAI)
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反復する股関節の過負荷・可動域の限界動作
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股関節周囲筋(腸腰筋・内転筋・中殿筋など)の柔軟性・筋力低下
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急激なトレーニング量の増加・フォームエラー
注意点と予後
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放置すると関節唇損傷が進行し、関節軟骨の摩耗や変形性股関節症に発展する可能性あり
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初期は保存療法(運動制限・理学療法)で改善するが、重症例では関節鏡視下手術が必要になることも
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可動域・筋力・フォームの改善を通じて再発防止が可能
膝に多いスポーツ障害・外傷
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは?
ジャンパー膝とは、膝のお皿(膝蓋骨)とすねの骨(脛骨)をつなぐ「膝蓋腱」に炎症や微細損傷が起こるスポーツ障害です。
ジャンプや着地、ダッシュなどで膝に強い負荷がかかる競技に多く見られるため、「ジャンパー膝」という名称が広く使われています。
正式な診断名は「膝蓋腱炎(しつがいけんえん)」と呼ばれます。
発症の原因とメカニズム
ジャンプ動作や着地動作の際に、膝蓋腱には繰り返し大きな牽引力と圧縮力がかかります。これにより腱に微細な損傷が起こり、炎症や変性が進行することで痛みを引き起こします。
主な要因は以下のとおりです:
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ジャンプ・着地・急停止・方向転換の繰り返し
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太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)の柔軟性不足・筋力低下
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オーバーユース(練習量の増加・休養不足)
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体幹・股関節・足関節との連動性の低下
主な症状
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膝蓋骨の下あたり(膝のお皿のすぐ下)に痛みが出る
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動き始めやジャンプ・着地時に鋭い痛み
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走ったりしゃがんだりすると痛みが増す
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初期はウォーミングアップで痛みが軽減するが、進行すると常時痛むようになる
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階段の上り下りやスクワット動作でも痛みを感じることがある
好発スポーツと対象者
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バスケットボール・バレーボール・陸上競技(跳躍系)・サッカー
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体操・スキー・スノーボードなどジャンプ・着地の多い競技
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中高生~大学生の競技者に多く、成長期の選手は特に注意
注意点とリスク
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痛みを我慢して運動を続けると、腱の変性が進行し、回復に長期間かかる可能性があります
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成長期では、**膝蓋腱付着部の骨がはがれる「シンディング・ラーセン・ヨハンソン病」や「オスグッド病」**との鑑別も重要
- 早期の対処・トレーニングの調整・ストレッチやフォーム改善で予防可能
オスグッド・シュラッター病とは?
オスグッド・シュラッター病は、成長期(小中学生)のスポーツ選手に多く発症する膝の障害で、
正式名称は「脛骨粗面骨端症(けいこつそめんこったんしょう)」といいます。
膝の下にある脛骨粗面(けいこつそめん)という骨の出っ張り部分に、膝蓋腱が繰り返し引っ張られることで炎症や痛みが起こる障害です。
発症の原因とメカニズム
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成長期の骨は柔らかく、強い牽引力に弱い
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ジャンプやダッシュ、屈伸動作の繰り返しで脛骨粗面に負担が集中
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特に太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)が硬く、引っ張る力が強い場合に発症しやすい
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骨の成長に筋肉の柔軟性が追いついていない状態で運動を繰り返すと起こりやすい
主な症状
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膝のお皿の下、脛骨粗面に腫れや出っ張り、圧痛が出る
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走る・跳ぶ・しゃがむなどで痛みが強くなる
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安静にすると痛みは引くが、運動再開で再発しやすい
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痛みが強くなると、正座や膝立ちが困難になる
好発年齢・対象者
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10〜15歳の成長期の男子に多い(女子も発症するが少数)
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サッカー・バスケットボール・バレー・陸上・体操など、ジャンプやダッシュ、膝の曲げ伸ばしが多い競技に多発
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運動量が多く、成長が活発な時期の選手が特にリスクが高い
鑑別疾患
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ジャンパー膝(膝蓋腱炎)との判別が必要
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成長期のスポーツ障害としては、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病(膝蓋骨下端の障害)とも鑑別が必要
注意点と予後
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成長が止まると自然に軽快することが多いが、無理に続けると慢性化・骨の変形が残ることも
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安静・ストレッチ・アイシング・サポーター使用が基本対応
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太ももの前の筋肉の柔軟性向上と体幹の安定性が再発予防に有効
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競技復帰には痛みのない状態での段階的運動再開が必要
タナ障害(滑膜ひだ症候群)とは?
タナ障害は、膝関節内に存在する「滑膜ひだ(タナ)」と呼ばれる膜状の組織が肥厚し、周囲の骨や軟骨と擦れて炎症や痛みを引き起こす障害です。
「タナ」とは日本語での通称で、正式には**滑膜ひだ症候群(plica syndrome)**と呼ばれます。
膝の内側前方に多くみられ、スポーツや膝の使いすぎをきっかけに発症することが多く、成長期から成人まで幅広い年代で起こります。
発症の原因とメカニズム
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膝関節内の滑膜ひだは通常は無症状だが、運動による摩擦や打撲で炎症を起こす
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屈伸運動やジャンプ、階段昇降の繰り返しで滑膜ひだが擦れて肥厚
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肥厚したタナが膝蓋骨や大腿骨とこすれることで痛みや引っかかり感が出現
主な症状
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膝の内側前方に刺すような痛みや違和感
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**屈伸時に引っかかり感やポキポキ音(クリック音)**がする
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膝に力が入りづらい・動きにくいと感じる
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スポーツ後や長時間の膝の曲げ伸ばしで症状が悪化
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初期は軽い違和感でも、進行すると慢性的な膝痛に発展
好発スポーツと対象者
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サッカー・バスケットボール・陸上・ダンス・バレエなど膝の曲げ伸ばしが多い競技
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成長期〜若年成人に多く、男女問わず発症
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特に膝を酷使する学生アスリートに頻出
鑑別が必要な障害
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ジャンパー膝や半月板損傷との症状の重なりに注意
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レントゲンでは写らないため、MRIや関節鏡が診断に有効
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関節内の炎症・関節ねずみ(関節内遊離体)との鑑別も重要
治療と対応
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初期は運動制限・アイシング・消炎処置などの保存療法が基本
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大腿四頭筋のストレッチ・筋力強化により症状改善が期待できる
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長期に改善がみられない場合は関節鏡による滑膜ひだの切除術が行われることもある
注意点
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痛みが軽くても繰り返す場合は専門機関での評価が重要
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フォーム改善や股関節・足関節との連動を見直すことも予防に有効
前十字靭帯損傷(ACL損傷)とは?
前十字靭帯(ACL:Anterior Cruciate Ligament)は、膝関節の内部で大腿骨と脛骨をつなぐ主要な靭帯の一つです。
主に、脛骨が前方へずれるのを防ぎ、膝関節の安定性を保つ役割を果たしています。
ACL損傷とは、この靭帯が強い外力や急激な動作で部分的、または完全に断裂する状態で、スポーツ中に多く発生する重度の外傷です。
発症の原因とメカニズム
ACL損傷は、主に非接触性(ぶつかっていない状況)で起こることが多いのが特徴です。代表的な要因は以下の通りです。
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急停止や急な方向転換(例:ドリブル中の切り返し)
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ジャンプからの着地動作で膝が内側に入る(ニーイン)
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膝が伸びきった状態での着地
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外部からの膝への衝撃(接触型)
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股関節・体幹の安定性不足や、柔軟性・筋力のアンバランス
特に女性アスリートや成長期の競技者では、解剖学的・ホルモン的要因により発症リスクが高いとされています。
主な症状
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損傷時に**「ブチッ」「ポキッ」といった音や感覚**を感じる
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膝が抜けたような不安定感
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受傷直後から膝の腫れや熱感(関節内出血)
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体重をかけるのが困難になる場合もある
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数日後には可動域制限、歩行困難、痛みが顕著になる
好発スポーツと対象者
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サッカー・バスケットボール・バレーボール・ラグビー・スキーなど、ストップ&ゴーやジャンプ動作が多い競技
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成長期の学生からプロ選手まで幅広く見られる
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女性競技者やフォームが不安定な選手に多い傾向
注意点と合併症
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半月板損傷や内側側副靱帯損傷を伴う「不幸の三徴」が同時に発生するケースも多い
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放置すると膝の不安定性が続き、軟骨損傷や変形性膝関節症の原因にもなります
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適切な評価と画像診断(MRI)が不可欠
治療とリハビリ
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損傷の程度によって**保存療法または手術(再建術)**を選択
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リハビリでは、筋力回復・神経制御・動作改善が重要
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復帰には6〜12か月程度のリハビリ期間を要することが多い
鵞足炎(がそくえん)とは?
鵞足炎とは、膝の内側下部にある「鵞足(がそく)」という腱の集合部に炎症が起こるスポーツ障害です。
鵞足は、以下の3つの筋肉(腱)が脛骨(すねの骨)の内側に集まって付着する部位を指します:
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縫工筋(ほうこうきん)
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薄筋(はっきん)
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半腱様筋(はんけんようきん)
これらの筋の腱が過剰に擦れたり引っ張られたりすることで炎症を起こし、痛みや腫れが発生します。
発症の原因とメカニズム
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膝の曲げ伸ばしの繰り返しによる摩擦ストレス
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ランニング・ジャンプ・ストップ動作などのオーバーユース
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太ももや股関節の筋力バランスの崩れ
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X脚傾向や足部アライメント(偏平足など)の影響
主な症状
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膝の内側下方(脛骨の内側)に鋭い痛みやズキズキするような痛み
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運動開始時・階段昇降・坂道歩行などで痛みが増す
-
触れると圧痛や腫れ・熱感がある
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膝の屈伸・伸展時に違和感や引っかかり感を感じる場合も
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休息で軽減するが、再発しやすいのが特徴
好発スポーツと対象者
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ランニング・サッカー・バスケットボール・バレー・登山
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マラソン愛好者や長距離ランナーに特に多い
-
スポーツ初心者〜熟練者まで幅広く見られ、中高年層の運動愛好家にも多発
鑑別が必要な障害
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内側側副靭帯損傷や半月板損傷との混同に注意
-
慢性的な場合は**滑液包炎(鵞足滑液包の炎症)**を伴っていることも
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MRIでの精密評価が必要になることもある
治療と対応法
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初期対応はアイシング・安静・消炎処置(炎症を抑える)
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太もも後面(ハムストリングス)や股関節のストレッチ
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足のアライメント改善(インソール使用など)
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症状が長引く場合は、物理療法や運動療法による機能改善が効果的
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稀に、慢性化した場合は注射やPRP療法が検討されることも
再発予防のポイント
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筋肉の柔軟性と筋力バランスの改善(特に内転筋群やハムストリングス)
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股関節・足関節との連動を含めた全身的な動作分析とフォーム修正が重要
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痛みの早期対処が長期化を防ぐカギ
後十字靱帯損傷(PCL損傷)とは?
後十字靱帯(PCL:Posterior Cruciate Ligament)は、膝関節の中央部にある強力な靱帯で、脛骨が大腿骨に対して後ろへズレるのを防ぐ役割を担っています。
前十字靱帯(ACL)と交差するように位置しており、膝の後方安定性の中心的存在です。
PCL損傷は、膝に後方から強い衝撃が加わることで発生します。
発症の原因とメカニズム
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膝を曲げた状態で強く打ちつける(交通事故、転倒など)
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スポーツ中のスライディングや膝からの落下
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サッカー・ラグビーなどでの膝前面への直接的なタックル
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ジャンプ後の着地やストップ動作における関節の過伸展+ねじれ
主な症状
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膝の奥の痛みや重だるさ
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腫れや熱感(急性期)
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階段の下りや坂道での不安定感
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運動時に「抜けるような」違和感
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前十字靱帯損傷と比べて症状が目立ちにくく、見逃されやすい
好発スポーツと対象者
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ラグビー・アメフト・サッカー・バスケットボール
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スキー・スノーボードなどで転倒時に膝をぶつけた場合
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格闘技・柔道など膝への打撲を伴う競技
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交通事故(ダッシュボード損傷)でも頻発
損傷の程度(グレード分類)
-
グレード1:軽度の伸張や微細損傷
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グレード2:部分断裂(後方ゆるみが明確)
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グレード3:完全断裂(不安定感が強く他靱帯損傷を伴うことも)
診断と治療のポイント
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X線やMRIで後方変位・靱帯断裂の確認が必要
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軽度〜中等度の損傷は保存療法が第一選択
→ 装具による固定、可動域と筋力のリハビリ -
完全断裂かつ他の靱帯損傷合併例では手術が検討される
注意点とリスク
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放置すると膝の後方不安定性が慢性化し、スポーツ時のパフォーマンス低下や軟骨損傷のリスクが高まる
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大腿四頭筋の強化が後方安定性の回復に有効
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競技復帰は、評価と段階的リハビリを経て安全に判断
半月板損傷とは?
半月板とは、膝関節内にあるC字型の軟骨組織で、内側と外側に1つずつ存在します。大腿骨と脛骨の間に挟まるように位置し、膝関節のクッションの役割を果たしています。
「衝撃吸収」「関節の安定性維持」「潤滑の補助」など、膝の健康に欠かせない重要な組織です。
この半月板が、スポーツ中のひねり動作や加齢による変性などで損傷すると、「半月板損傷」と呼ばれます。
発症の原因とメカニズム
◆ 急性損傷(外傷性)
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ジャンプや方向転換時の膝の捻り動作
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膝の屈曲位での急激な回旋負荷(スキー、サッカーなど)
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前十字靭帯損傷など他の外傷との合併が多い
◆ 慢性損傷(変性性)
-
加齢による軟骨組織の脆弱化
-
軽微な負荷でも損傷が起こりやすくなる
-
特に40代以降のスポーツ愛好家に多い
主な症状
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膝関節内の痛み(特に曲げ伸ばし時)
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関節の引っかかり感、ロッキング(急に動かなくなる)
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膝の内側または外側の圧痛や腫れ
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階段昇降やしゃがむ動作での違和感や不安定感
-
長時間の歩行や運動後に膝がこわばる、腫れる
好発スポーツと対象者
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サッカー・バスケットボール・ラグビー・スキーなど、急停止・回旋動作が多い競技
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柔道や相撲など膝への荷重が大きい競技
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若年の外傷性損傷から、中高年の変性損傷まで幅広く発症
損傷の種類
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縦断裂・横断裂・水平断裂・バケツ柄断裂など、断裂形状によって分類される
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断裂の場所(血流の有無)によって自然治癒の可能性が変わる
→ 血流のある「赤赤ゾーン」では治癒しやすいが、「白白ゾーン」は治癒しにくい
注意点と治療の選択肢
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放置すると、関節軟骨に負担が集中し変形性膝関節症に進行するリスクあり
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MRIによる精密検査で損傷部位や程度を評価
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**保存療法(運動制限・リハビリ)か、症状・損傷の程度によっては関節鏡視下手術(縫合または切除)**を選択
内側側副靱帯損傷(MCL損傷)とは?
内側側副靱帯(MCL:Medial Collateral Ligament)は、膝の内側に位置し、大腿骨と脛骨をつなぐ靱帯です。
この靱帯は、膝関節の内側へのぐらつきを抑える重要な役割を果たしており、特に横方向からの衝撃に対して関節を安定させています。
MCL損傷は、スポーツ中に膝の外側から強い衝撃を受けたり、膝がねじれる動作で起こる外傷性の靱帯損傷です。
主な原因と発症メカニズム
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接触プレーでの衝突やタックル(膝の外側からの外力)
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着地時や方向転換時に膝が内側に崩れる動作(ニーイン)
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スキーやスノーボードなどでの転倒・ねじれ動作
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成長期における関節の柔軟性と筋力のアンバランス
主な症状
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膝の内側の鋭い痛みや圧痛(靱帯付着部)
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膝を伸ばす・曲げる時の痛み
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腫れや熱感(出血がある場合も)
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膝の内側への不安定感
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歩行時や階段昇降での不安定さや恐怖感
好発スポーツと対象者
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サッカー・ラグビー・アメフトなどの接触・タックル競技
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柔道・レスリングなどの組技系競技
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スキー・スノーボード(特に初心者の転倒時)
-
成長期のスポーツ少年〜成人アスリートまで幅広く発症
損傷の程度(グレード分類)
MCL損傷は、以下のように損傷の程度によって分類されます:
-
グレード1:軽度の伸び・微細な損傷(圧痛と軽度の痛み)
-
グレード2:部分断裂(腫れ・不安定感が中等度)
-
グレード3:完全断裂(著しい不安定感・痛み)
注意点と治療の基本
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多くは**保存療法(サポーター・装具+リハビリ)**で回復可能
-
グレード3で他靱帯(ACLなど)との複合損傷がある場合は手術を要することも
-
競技復帰には可動域の回復・筋力トレーニング・動作の再教育が重要
-
無理な早期復帰は再損傷リスクを高めるため注意
変形性膝関節症(スポーツ初期型)とは?
変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減り、関節の変形や炎症、痛みを伴う慢性の関節疾患です。
高齢者に多くみられる疾患ですが、スポーツを継続する中高年層のアスリートや運動愛好家では、比較的早期(初期段階)で症状が出始めることもあります。
これがいわゆる「スポーツ初期型の変形性膝関節症」で、軽度の関節変性が運動により早期に顕在化するタイプです。
原因とメカニズム
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加齢による関節軟骨の摩耗や乾燥・亀裂
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過去の靭帯損傷や半月板損傷などの既往歴
-
O脚・X脚などのアライメント不良(荷重バランスの偏り)
-
長年の運動や過剰な負荷が膝の軟骨や滑膜にストレスを蓄積
主な症状
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膝の内側(または外側)に痛みや重だるさ
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立ち上がり、歩き始め、階段昇降で痛みが出る
-
長時間の運動や歩行後に膝が腫れる・こわばる
-
進行すると**O脚変形、可動域制限、軋み音(クレピタス)**が生じる
-
運動初期と終了後に特に症状が強くなることが多い
好発年齢・対象者
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40代後半以降のスポーツ愛好家・運動指導者・登山者など
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長年スポーツを続けてきた元アスリート層
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肥満傾向のある中高年(荷重ストレスが高まる)
診断と重症度分類(K-L分類)
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X線検査で関節の隙間や骨棘(こつきょく)形成を評価
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変形や骨の摩耗度合いにより、Kellgren-Lawrence(K-L)分類でステージ0〜4に分類
→ スポーツ初期型はK-Lグレード1〜2に相当
対応と治療
-
保存療法が基本(運動制限・アイシング・消炎鎮痛剤)
-
筋力トレーニング(特に大腿四頭筋)とストレッチ
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歩行フォーム・着地・荷重の見直し(インソールやテーピング)
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重度進行例では関節注射や手術(骨切り術・人工関節)も選択肢
予防と再発防止
-
適切なウォーミングアップとクールダウンの徹底
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運動強度の調整・休息の確保
膝だけでなく、股関節・足首の動きや柔軟性にも着目した全身的なアプローチが有
足首に多いスポーツ外傷・障害
足関節捻挫とは?
足関節捻挫とは、足首をひねった際に靱帯が過度に伸ばされたり、断裂することで起こる外傷です。
スポーツ外傷の中で最も頻度が高く、**特に内反捻挫(足首を内側にひねる)**が圧倒的多数を占めます。足首の外側には、以下のような靱帯が複数存在します:
- 前距腓靭帯(もっとも損傷しやすい)
- 踵腓靭帯
- 後距腓靭帯
発症の原因とメカニズム
- ジャンプ着地時のバランス崩れ
- 急な方向転換やストップ動作
- 不整地でのランニングやプレー中の接触プレー
- 靴の不適合やテーピング不足
- 筋力低下やバランス感覚の未発達(特に成長期)
主な症状
- 足首の外側(くるぶし下)の鋭い痛みと腫れ
- 押すと強い圧痛がある(靱帯部)
- 歩行や片脚立ちが困難
- 内出血や皮下出血斑が数日後に出現
- ひねった方向によっては内側や高位にも痛みが出る
好発スポーツと対象者
- バスケットボール・サッカー・テニス・バレーボールなどジャンプや切り返しが多い競技
- 初心者〜上級者まで幅広い競技者に起こる
- 小中学生の運動部〜プロ選手・一般ランナーまで頻発
重症度(グレード分類)
- グレード1(軽度):靱帯の微小損傷、腫れや痛みは軽い
- グレード2(中等度):靱帯の部分断裂、腫れと歩行障害あり
- グレード3(重度):靱帯完全断裂、著しい不安定感・内出血
治療と初期対応(RICE)
- R:Rest(安静)
- I:Ice(冷却)
- C:Compression(圧迫)
- E:Elevation(挙上)
さらに、
- 可動域・荷重のコントロールをしながら徐々にリハビリへ移行
- 中〜重度では、サポーターや固定具を使用する期間が必要
再発予防とリスク
- 捻挫の約30〜40%が再発するといわれており、「癖になる」=慢性化するケースも
- 再発予防には以下が重要:
- 足関節周囲筋の筋力強化
- バランストレーニング(片脚立ち・不安定な足場での運動)
- 着地フォーム・動作改善
放置のリスク
- 「軽いから」と放置すると、靱帯が緩んだままになり関節の不安定性が慢性化
- 足関節不安定症 → 距骨の軟骨損傷、変形性足関節症のリスクにもつながる
このように、足関節捻挫は軽視されがちですが、適切な評価と対応をしなければ、長期にわたるパフォーマンス低下や後遺症を招く可能性があります。
アキレス腱炎とは?
アキレス腱炎は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)と踵の骨(踵骨)をつなぐ「アキレス腱」に炎症が起こる障害です。
**スポーツや繰り返しの動作による使いすぎ(オーバーユース)**が主な原因で、ランニングやジャンプ動作の多い競技に多発します。
発症の原因とメカニズム
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繰り返しのランニング・ジャンプ・ダッシュ動作
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急な運動強度の増加(例:久しぶりの運動、練習量の急増)
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ふくらはぎの筋肉の柔軟性低下・筋疲労
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足部アライメント異常(偏平足、過回内など)
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硬い路面での運動や不適切な靴の使用
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加齢による腱組織の劣化(40代以降に好発)
主な症状
-
アキレス腱〜踵にかけての鈍い痛みや張り感
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朝起きて一歩目が痛いが、動くとやや軽減する
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ふくらはぎの疲労感や硬さを伴うことが多い
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腫れや熱感、アキレス腱の肥厚(太くなる)
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悪化すると階段昇降やつま先立ちが困難になる
好発スポーツと対象者
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ランニング・マラソン・サッカー・バスケットボール・テニス・バレーボール
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中高年の運動愛好家や再開組の市民ランナー
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**成長期のスポーツ少年に発症するケース(セーバー病との鑑別が必要)**もある
鑑別が必要な障害
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アキレス腱断裂(突然の「バチッ」という断裂音+激痛)
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セーバー病(踵の骨端炎)
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滑液包炎(アキレス腱下滑液包の炎症)
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足関節や後脛骨筋腱炎などとの鑑別も重要
対応と治療
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安静・アイシング・消炎鎮痛剤の使用
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ストレッチ(特にふくらはぎの筋肉)
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超音波や低出力レーザー治療などの物理療法
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テーピング・インソールでの足部サポート
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改善しない場合は、運動量調整や一時的な活動制限が必要
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慢性化した場合は「腱障害(tendinopathy)」と呼ばれ、腱の変性が進行していることも
再発予防と注意点
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十分なウォーミングアップ・クールダウンの徹底
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ふくらはぎの柔軟性確保と筋持久力強化
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足の着地フォーム・靴の見直し
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階段トレーニングや硬い地面での運動は痛みがある間は控える
アキレス腱炎は「ちょっとした張り感だから」と軽視されがちですが、放置すると腱断裂や慢性腱障害に進行するリスクもあります。
早期の対処と、原因となる動作やフォームの見直しが予後を大きく左右します。
スポーツ障害・外傷に関するFAQ(よくある質問)
Q1. 痛みがあってもプレーできるなら、運動を続けても大丈夫ですか?
A. 一時的に動けても、組織が損傷している状態では炎症が悪化し、損傷の慢性化や他部位への負担増加につながるリスクがあります。
痛みは体の警告サイン。適切な評価と休息を取り入れることが、長期的な競技継続の鍵になります。
Q2. 捻挫や腱炎などの「軽いケガ」は自然に治りますか?
A. 初期段階では自然軽快するケースもありますが、原因が改善されなければ再発や悪化の可能性が高まります。
特に靱帯や腱は血流が乏しく、放置すると癒着や変性が進行するため、適切なリハビリと機能改善が重要です。
Q3. ケガの再発を防ぐにはどうしたらいいですか?
A. 再発予防には、以下の要素が重要です:
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筋力と柔軟性のバランス調整
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関節の可動域と安定性の向上
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フォームの見直しや競技特性に応じた動作改善
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インソール・サポーター・テーピングの活用
特に、体幹・股関節・足部を含めた全身の連動性の見直しが予防の鍵になります。
Q4. 成長期の子どもが痛みを訴える場合、どのように対応すべきですか?
A. 成長期は骨や筋肉の発達バランスが崩れやすく、オスグッド病・セーバー病など特有の障害が起こりやすいです。
痛みを無視せず、一時的な運動制限・ストレッチ・体の使い方の指導が非常に効果的です。無理に運動を続けると、成長後の機能障害の原因になる可能性もあります。
Q5. サポーターやテーピングはした方がいいですか?
A. 痛みのある時期や再発予防の段階では有効です。
ただし、頼りすぎると筋力やバランス機能の低下につながるため、並行してリハビリ・トレーニングを行うことが重要です。正しい巻き方・選び方を専門家に指導してもらいましょう。
Q6. 痛みが出てからどれくらいで病院や整骨院を受診すべき?
A. 原則として、運動に支障がある痛みが1〜2日以上続く場合は早期受診が推奨されます。
腫れ・変形・内出血がある場合や、関節の不安定感・機能障害がみられるときは、即時の対応が必要です。
Q7. スポーツを休むことでパフォーマンスが下がるのが心配です。
A. 一時的な休養よりも、無理して悪化させる方が競技離脱期間は長くなります。
痛みの原因となる部位を休ませつつ、他部位のトレーニング(体幹・上肢・反対側下肢など)を継続することも可能です。
医療機関と連携しながら、段階的な競技復帰プログラムを組むことが理想的です。
Q8. 整骨院と整形外科のどちらに行けばいいか迷っています。
A. 外傷性(捻挫・靱帯損傷・骨折疑いなど)や画像診断が必要な場合は整形外科が適しています。
一方、慢性的な障害・機能改善・動作指導・再発予防などには整骨院のアプローチが効果的です。当スポーツ整骨院のように、整形外科と連携している施設であれば、症状に応じて適切に振り分けられます。
この記事の監修者:鮫島 洋一(さめしま よういち)
保有資格:
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
- JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
- NASMフィットネスエデュケーター
プロフィール:
メディカルトレーナーとして、甲子園大会や世界陸上など国内外のスポーツ現場に帯同。トップアスリートから成長期の学生アスリートまで、競技復帰・再発防止・パフォーマンス向上を見据えた施術・指導を行っている。
スポーツ障害に対する専門的な視点と、根本改善を重視した全身アプローチで、多くの競技者のサポートに携わってきた。
現在は江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」を運営し、地域の運動愛好家・学生アスリートからの信頼も厚い。また、トレーナー教育のための専門学校のコース長として教育の現場でも活躍している。









