【症例報告】足が動かしにくく歩行が不安定な80代女性|市民プールまで歩くことを目標にした症例
2026年10月1日

「以前より足が動かしにくい」
「歩いているとバランスが悪い気がする」
「運動不足を解消したいけれど、歩くことに不安がある」
高齢になると、このような身体の変化を感じる方は少なくありません。
しかし、歩行の不安定感や足の上げにくさは、単純に「年齢」や「筋力低下」だけで説明できるものではありません。
股関節や足関節の可動域、下肢・体幹の筋力、姿勢、バランス能力、感覚機能など、さまざまな要素が関係する可能性があります。
今回は、江東区の大島駅前サモーナスポーツ整骨院に来院された、足の動かしにくさと歩行時の不安定感が気になっていた80代女性の症例をご紹介します。
当初は「下肢のむくみが気になるのでマッサージをしてほしい」というご希望でした。
しかし詳しくお話を伺い身体を評価すると、患者さん自身が本当に取り戻したいのは、**「市民プールまで自分で歩いて行き、以前のようにプールを再開すること」**だと分かりました。
80代女性|足の動かしにくさと歩行時の不安定感で来院
来院時のお悩み
主なお悩みは、
・運動不足を解消したい
・足が以前より動かしにくい
・歩行時のバランスが気になる
・下肢のむくみが気になる
というものでした。
整形外科では、特に大きな問題は指摘されていないとのことでした。
当初は下肢のマッサージを希望されていましたが、問診を詳しく行うと、腰・肩・股関節などにも気になる症状があることが分かりました。
そのため、下肢だけをマッサージするのではなく、歩行や日常生活に影響する身体機能を確認しました。
歩きにくさ・バランスの悪さを身体全体から評価
大島駅前サモーナスポーツ整骨院では、足が動かしにくいからといって、脚だけを見るわけではありません。
歩くという動作には、
・姿勢
・脊柱の動き
・股関節の可動域
・下肢筋力
・体幹機能
・バランス能力
・感覚機能
など、さまざまな身体機能が関係します。
今回は立位姿勢、前屈動作、股関節周囲の柔軟性、下肢筋力などを確認しました。
立位姿勢では前重心の傾向を確認
立位評価では、
ストレートネック傾向
前重心
がみられました。
前重心とは、立った際に身体の重心が前方へ偏っている状態です。
ただし、「前重心だから歩行が不安定になった」と断定することはできません。
姿勢はあくまで歩行能力を構成する一つの要素として評価しています。
FFDは拳2個分
FFD(指床間距離)は、立った状態から身体を前屈し、手と床との距離を確認する評価です。
今回は床まで拳2個分ほど距離が残っていました。
股関節や脊柱、ハムストリングスなどの柔軟性を含め、身体全体の動きを確認する指標として評価しました。
腰・股関節・下肢の理学検査
今回行った検査では、
- ラセーグテスト:陰性
- FNSテスト:陰性
- トーマステスト:陰性
- ケンプテスト:陰性
でした。
SLRテストでは左右差を確認
SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)では、
- 右:約70°
- 左:約60°で痛みあり
という左右差がみられました。
SLRテストは、仰向けの状態で膝を伸ばしたまま脚を上げ、神経症状や下肢後面の柔軟性などを確認する検査です。
今回は左側で約60°のところに痛みが確認されました。
HBDでは左股関節に痛み
HBD(踵殿距離)は、うつ伏せで膝を曲げ、大腿前面の柔軟性などを確認する評価です。
今回、左側の評価時に股関節周辺へ痛みがみられました。
そのため、歩行能力を考えるうえでも、股関節周囲の可動性や筋機能を確認していく必要があると考えました。
ハムストリングス・腸腰筋・殿筋・大腿四頭筋の柔軟性を評価
筋肉の柔軟性を確認すると、
・ハムストリングス
・腸腰筋
・殿筋群
・大腿四頭筋
にタイトネスがみられました。
これらはいずれも、立ち上がりや歩行などに関係する筋肉です。
ただし、筋肉が硬いことだけで歩行時の不安定感を説明することはできません。
関節可動域、筋力、バランス能力などと合わせて評価する必要があります。
腸腰筋の筋力はMMT3
MMT(徒手筋力テスト)では、
腸腰筋:3
でした。
MMT3は、重力に抗して関節を動かすことはできるものの、外から加えられる抵抗には十分に耐えられない筋力レベルを表します。
腸腰筋は股関節を曲げる働きがあり、歩行時に脚を前方へ運ぶ動作にも関係します。
今回の患者さんが訴えていた「足が動かしにくい」という感覚を考えるうえで、確認しておきたい所見の一つでした。
中殿筋についても筋機能を評価しました。
中殿筋は片脚で身体を支える際に骨盤を安定させる重要な筋肉で、歩行やバランス能力にも関係します。
骨盤・身体の左右差を確認
アライメント評価では、
右短下肢傾向
がみられました。
ただし、この左右差を歩行不安定の直接的な原因とは判断していません。
骨盤・股関節・脊柱を含めた身体全体の状態を把握するための一つの情報として評価しました。
足が動かしにくい・歩行が不安定になる原因は一つではありません
「足が上がりにくい」
「以前より歩くのが不安定になった」
という症状を、すべて「インナーマッスルが弱くなったから」と考えることは適切ではありません。
高齢者の歩行能力には、
・下肢筋力
・体幹機能
・股関節や足関節の可動域
・姿勢
・バランス能力
・視覚
・感覚機能
・前庭機能
・神経系
・服用している薬
・活動量
など、さまざまな要素が関係します。
そのため、重要なのは「とにかく筋肉を鍛えること」ではなく、どの身体機能が現在の歩きにくさに関係している可能性があるのかを評価したうえで運動を選択することです。
大島駅前サモーナスポーツ整骨院で行った施術
今回行った施術は、
- 骨盤矯正
- ハイボルト施術
- 手技療法
です。
腸腰筋・中殿筋へのハイボルト
歩行や股関節の動きとの関連を考え、腸腰筋・中殿筋周辺へハイボルト施術を行いました。
臀部・ハムストリングスへの手技
うつ伏せでは、臀部とハムストリングスを中心に手技療法を行いました。
大腿四頭筋・腸腰筋への手技
仰向けでは、大腿四頭筋・腸腰筋周辺へ手技療法を行いました。
施術後は立ち上がり時の腰痛と歩行に変化
施術前には、立ち上がる際に腰の痛みがありました。
骨盤周囲への施術とハイボルト施術後に再評価すると、
立ち上がり動作で感じていた腰痛が消失。
さらに患者さん本人からも、「来たときよりスムーズに歩ける」という感覚の変化がありました。
ただし、これは初回施術直後の変化です。
歩行能力やバランス能力そのものが改善したと判断するためには、継続した評価が必要です。
目標は「市民プールまで歩いてプールを再開すること」
今回の問診で特に重要だったのは、患者さん自身の目標が明確になったことです。
患者さんが目指しているのは、
「市民プールまで歩いて行けるようになること」
そして、
「以前行っていたプールを再開すること」
です。
単に「筋力をつける」「姿勢を良くする」という目標ではなく、患者さんが実際に取り戻したい生活をゴールに設定しました。
今後は「歩ける身体」をつくるための運動機能を評価
次回来院時には、楽トレによる体幹筋機能の検査を予定しています。
ただし、今後の運動療法では体幹だけではなく、
・立ち上がり能力
・片脚立位
・歩行速度
・歩行時の安定性
・股関節周囲筋力
・足関節機能
・体幹機能
・バランス能力
などを確認していくことが重要です。
最終的には、マッサージを受けること自体をゴールにするのではなく、**「自分の脚で市民プールまで歩いて行き、運動を再開できる身体機能を取り戻すこと」**を目指します。
80代の歩行・バランス評価で今後確認したいポイント
高齢者の歩行不安定や転倒リスクを評価する場合、筋力だけでなく実際の動作能力を数値化しておくことも重要です。
今後は必要に応じて、
- TUG(Timed Up and Go Test)
- 5回立ち上がりテスト
- 通常歩行速度
- 片脚立位時間
などを確認すると、現在の身体機能だけでなく、その後の変化も客観的に評価できます。
例えばTUGは、椅子から立ち上がり、3m歩いて方向転換し、再び椅子へ座るまでの時間を測定する評価です。
こうした検査を用いることで、「なんとなく歩きやすくなった」だけではなく、実際の移動能力がどう変化したのかを確認できます。
高齢者の下肢のむくみで注意したい症状
今回の患者さんは「下肢のむくみ」も気にされていました。
高齢者の下肢のむくみには、活動量の低下だけでなく、静脈・心臓・腎臓などさまざまな要因が関係する場合があります。
特に、
・片脚だけ急に腫れた
・赤みや熱感がある
・ふくらはぎに強い痛みがある
・急激にむくみが悪化した
・息苦しさや胸痛がある
といった場合には、マッサージを優先せず医療機関での評価が必要です。
江東区・大島で「歩きにくい」「足が上がりにくい」と感じている方へ
高齢になるにつれて、
「昔より歩くのが遅くなった」
「足が上がりにくくなった」
「外出するのが不安になった」
という変化を感じる方は少なくありません。
しかし、「年齢だから仕方ない」と考えて活動量を減らしてしまうと、さらに筋力や体力が低下する悪循環につながる可能性があります。
大切なのは、現在の身体機能を確認し、その方の状態に合わせて必要な運動を選択することです。
江東区・大島の大島駅前サモーナスポーツ整骨院では、痛みだけでなく、姿勢、関節可動域、筋力、バランス、歩行などを確認しながら、患者さんが「何をできるようになりたいのか」を大切にしています。
今回の患者さんの場合、そのゴールは「市民プールまで歩くこと」です。
その目標に向けて、必要な身体機能を一つずつ確認していくことが重要だと考えています。
足の動かしにくさ・歩行の不安定感についてよくある質問
Q1. 足が上がりにくいのは筋力低下が原因ですか?
筋力低下は原因の一つになり得ますが、それだけとは限りません。
股関節や足関節の可動域、神経機能、バランス能力、感覚機能なども関係するため、総合的な評価が必要です。
Q2. 80代でも筋力トレーニングはできますか?
身体状態に合わせて負荷を調整すれば、高齢者でも筋力トレーニングを行うことは可能です。
ただし、疾患や転倒リスクなどを確認したうえで安全に進めることが重要です。
Q3. 歩行が不安定な場合は体幹を鍛えればいいですか?
体幹機能は重要ですが、体幹だけを鍛えればよいとは限りません。
下肢筋力、股関節・足関節機能、バランス能力などを評価し、その方に不足している機能に合わせて運動を選択することが大切です。
Q4. マッサージで歩きやすくなることはありますか?
筋緊張や関節周囲の動きが歩行に影響している場合、施術後に歩きやすさが変化することはあります。
ただし、長期的な歩行能力を考える場合には、必要に応じて筋力・バランス・歩行などの運動療法を組み合わせることが重要です。
Q5. 下肢のむくみはマッサージしても大丈夫ですか?
原因によります。
両脚の軽度なむくみでも原因を確認することが大切です。
片脚だけの急な腫れ、赤み、熱感、痛み、息苦しさなどがある場合は、マッサージを行わず医療機関へ相談してください。
Q6. 歩くこと自体が運動になりますか?
歩行も重要な身体活動です。
ただし、歩行能力が低下している方では「とにかく歩く」だけではなく、筋力やバランス能力を確認し、安全に歩ける環境と身体機能を整えることが重要です。
まとめ|「マッサージしてほしい」の先にある本当の目標を考える
今回の症例は、下肢のむくみと運動不足が気になり、「マッサージをしてほしい」と来院された80代女性です。
しかし、詳しく問診・評価すると、足の動かしにくさ、歩行時の不安定感、股関節周囲の柔軟性低下、腸腰筋の筋力低下など、複数の身体機能について確認する必要があることが分かりました。
施術直後には立ち上がり時の腰痛が消失し、患者さん自身も来院時よりスムーズに歩ける感覚がありました。
そして問診を進めるなかで明確になった本当の目標は、
「市民プールまで自分で歩いて行き、プールを再開すること」
でした。
高齢者の身体づくりでは、痛みを軽減することだけでなく、その先にある「やりたいこと」を取り戻すことも大切です。
今後は体幹・下肢筋力・バランス・歩行能力などを客観的に評価しながら、市民プールまで安全に歩ける身体機能を目指していきます。
※本記事は大島駅前サモーナスポーツ整骨院で対応した一症例を、個人が特定されない形で紹介しています。身体機能や施術後の変化には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。
この記事の執筆者:中澤 武士(なかざわ たけし)
保有資格:
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柔道整復師(国家資格)
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NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
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NASM-PES(パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト)
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中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)
プロフィール:
スポーツ現場から医療分野まで幅広く携わる実践型トレーナー・施術者。
これまでに、大相撲の横綱をはじめとする幕内力士、新極真空手日本代表、プロボクサー、デフフットサル日本代表、競輪選手、実業団選手、市民ランナーなど多様な競技者をサポート。
施術による痛みの改善から競技復帰、さらにはパフォーマンス向上まで一貫したサポートを行うことを強みに、学生アスリートからトップ選手まで高い信頼を得ている。
現在は、江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」のエリアマネージャーとして、現場での施術・トレーニング指導に従事。スタッフ教育にも力を入れ、後進トレーナーの育成にも積極的に取り組んでいる。
区の行政事業における体操教室、トレーナー専門学校での学生教育、同業トレーナーへの指導、社内研修での講師など、教育・普及活動にも幅広く参加。
「根本改善・再発防止・パフォーマンス向上」を掲げ、身体の本質を見極める全身アプローチを信条に、多くの利用者が長く健康で動ける身体づくりをサポートしている。
この記事の監修者:鮫島 洋一(さめしま よういち)
保有資格:
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
- JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
- NASMフィットネスエデュケーター
プロフィール:
メディカルトレーナーとして、甲子園大会や世界陸上など国内外のスポーツ現場に帯同。トップアスリートから成長期の学生アスリートまで、競技復帰・再発防止・パフォーマンス向上を見据えた施術・指導を行っている。
スポーツ障害に対する専門的な視点と、根本改善を重視した全身アプローチで、多くの競技者のサポートに携わってきた。
現在は江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」を運営し、地域の運動愛好家・学生アスリートからの信頼も厚い。また、トレーナー教育のための専門学校のコース長として教育の現場でも活躍している。









