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長年の肩こり・腰のこりと頭痛|姿勢と全身の動きを評価した50代女性の症例

2026年09月9日

「肩や腰のこりが慢性化している」「最近は頭痛まで感じるようになった」

このような状態では、肩や腰の硬い部分をほぐすだけでなく、長時間の同一姿勢、関節の可動域、筋力、身体の使い方などを総合的に確認することが大切です。

今回は、数年前から肩こりと腰のこりに悩み、ここ1週間は頭痛も感じるようになった50代女性の症例をご紹介します。

ご来院時のお悩み

患者さんは50代の女性です。

数年前から肩こりと腰のこりが続いており、最近1週間は頭痛も感じるようになりました。患者さん自身は、天候が不安定になったことも関係しているのではないかと感じていました。

ただし、頭痛が天候や肩こりによるものかどうかは、今回の身体評価だけでは判断できません。頭痛には緊張型頭痛や片頭痛のほか、医療機関での検査を優先すべきものもあるため、症状の経過を慎重に確認する必要があります。

患者さんの目標は、一時的に身体をほぐすだけでなく、肩や腰に硬さ・こりを感じにくい身体をつくることです。

肩こりや腰のこりは姿勢だけが原因?

長時間のデスクワークやスマートフォンの使用では、頭が前に出た姿勢や背中を丸めた姿勢が続きやすくなります。その結果、首・肩・背中の筋肉に負担を感じる方は少なくありません。

一方で、「姿勢が悪いから肩こりや腰痛になる」と単純に断定することはできません。姿勢と症状の関係には個人差があり、筋力、柔軟性、活動量、睡眠、ストレス、仕事内容なども関係します。

大切なのは、一つの理想的な姿勢を維持し続けることではなく、同じ姿勢が長く続いていないか、必要なときに身体を動かせる状態かを確認することです。

姿勢と全身の動きを評価

立位では、頭が前方へ出やすい、いわゆるストレートネック傾向と、背中が丸くなる円背姿勢がみられました。

「ストレートネック」は本来、画像検査で頚椎のカーブが減少している状態を指すことがあります。今回は画像診断ではなく、立位で頭部が前方へ位置しやすい姿勢として評価しています。

また、正面から確認すると右側の骨盤が下がる左右差もみられました。

前屈では、指先がすねの中央付近まで届く状態でした。前屈・後屈では骨盤の前後方向への移動が少なく、身体をひねる動作にも可動域制限が確認されました。

肩や腰のこりがある場合でも、首や腰だけを評価すればよいとは限りません。身体を曲げる、反らす、ひねる動作には、背骨・骨盤・股関節・肩甲骨などが連動して関わります。

今回の患者さんは、骨盤や股関節、胸郭の動きが少なく、首・肩や腰周辺へ負担が偏っている可能性を考えました。

下肢の柔軟性と神経症状を確認

神経の状態や下肢の柔軟性を確認するため、複数の理学検査を行いました。

FNSテストは陰性でした。FNSテストは、太ももの前側に関係する神経へ刺激を加え、痛みやしびれが再現されるかを確認する検査です。

SLRテストでは反応がみられましたが、ラセーグテストは陰性でした。SLRテストは、仰向けで脚を上げて神経症状や太もも後面の柔軟性を確認する検査です。今回はハムストリングスの硬さもみられたため、SLRの反応だけで神経への問題があるとは判断していません。

トーマステストは陽性で、股関節前面にある腸腰筋の硬さが確認されました。一方、大腿四頭筋の柔軟性を確認するHBDや尻上がり徴候では、明らかな制限はみられませんでした。

柔軟性を詳しく確認すると、ハムストリングスと腸腰筋に硬さがあり、全体的に左側の制限が強い状態でした。

肩関節周辺にも可動域制限

肩関節周辺では、HFTとCATが陽性でした。

HFT(肩甲骨を固定して腕を反対側へ動かす検査)とCAT(肩甲骨を固定して腕を上げる検査)は、肩関節や肩後方組織の柔軟性を確認するための検査です。

両方の検査で制限がみられたことから、肩甲骨と上腕骨の動きを分けたときに、肩関節周辺の柔軟性が不足している可能性がありました。

立位でみられた頭部前方位や円背だけでなく、肩関節周辺の動きにくさも、肩上部のこりに関係している可能性があります。

姿勢を支える筋力も評価

徒手筋力検査では、腸腰筋と中殿筋がMMT4でした。

MMT4は、重力に逆らって動かし、ある程度の抵抗には耐えられるものの、十分な抵抗に対しては保持しにくい状態を表します。左右で大きな筋力差はみられませんでした。

腸腰筋は股関節を曲げるだけでなく、腰部や骨盤の安定にも関係します。中殿筋は、立位や歩行時に骨盤を横方向から支える筋肉です。

今回みられた右骨盤下がりや動作時の骨盤の動きにくさには、柔軟性だけでなく、骨盤周辺の筋力も関係している可能性を考えました。

ただし、「インナーマッスルが弱いから姿勢が悪くなった」と断定することはできません。姿勢や症状は、筋力だけでなく生活習慣や動作の癖などを含む複数の要素から考える必要があります。

実施した施術

今回は、以下の施術を行いました。

  • 骨盤周辺の調整

  • 下肢を中心としたハイボルト

  • 肩上部から殿部への手技

  • 肩甲骨周辺へのアプローチ

  • 肩関節・頚部周辺のリリース

  • 広背筋のストレッチ

はじめに骨盤周辺の調整と下肢へのハイボルトを行いました。

この段階では、患者さん自身に明確な体感の変化はありませんでした。しかし、前屈・後屈を再評価すると、施術前にはみられなかった骨盤の前後方向への移動が確認できました。

身体の変化は、必ずしも「軽くなった」「柔らかくなった」といった感覚だけで判断できるものではありません。患者さんの感覚を尊重しながら、可動域や動作の変化もあわせて確認することが重要です。

肩・肩甲骨・頚部への施術

続いて、うつ伏せで肩上部から殿部まで手技を行い、横向きでは肩甲骨周辺へアプローチしました。

さらに、仰向けで肩関節と頚部周辺のリリースを行い、硬さがみられた広背筋に対してストレッチを実施しました。

施術後に姿勢写真を再撮影したところ、頭部前方位と円背の程度が軽減し、耳・肩・骨盤を結ぶ身体の基準線に近づく変化がみられました。患者さんにも、施術後の身体の変化を感じていただけました。

ただし、一度の施術で姿勢そのものが定着したわけではありません。写真上の変化は、筋肉の緊張や関節の動きが一時的に変わった結果である可能性もあります。今後も日常生活での症状や姿勢を確認する必要があります。

頭痛と肩こりの関係

首や肩周辺の筋肉の緊張に伴って、頭痛を感じることはあります。代表的なものには緊張型頭痛がありますが、頭痛の原因を肩こりだけで判断することはできません。

今回は1週間前から頭痛が出るようになったため、施術後の反応だけでなく、頭痛の頻度、強さ、持続時間、吐き気や光・音への過敏、しびれなどの随伴症状を確認していくことが大切です。

天候の変化で頭痛が出ると感じる方もいますが、天候との関連だけで片頭痛などを診断することもできません。頭痛が続く場合は、脳神経内科、脳神経外科、頭痛専門外来などへの相談も検討してください。

今後の方針

患者さんの目標は、肩や腰のこりをその都度ほぐすだけでなく、硬さを感じにくい身体をつくることです。

今後は、次の内容を確認しながら進めます。

  • 肩こり・腰のこり・頭痛の経過

  • 頚部、肩関節、胸郭の可動域

  • 骨盤と股関節の連動

  • 身体を曲げる・反らす・ひねる動作

  • 体幹を支える筋肉の働き

  • デスクワークなどで同じ姿勢が続く時間

  • 自宅で継続できる運動とストレッチ

次回は、体幹を支える筋肉の状態も詳しく評価する予定です。

体幹トレーニングは姿勢を保つための一つの方法ですが、筋力だけを高めれば肩こりや腰のこりが再発しなくなるわけではありません。関節の可動域、日常の活動量、姿勢を変える頻度なども含めて整えることが大切です。

デスクワーク中に意識したいこと

日本整形外科学会も、肩こりの予防として、同じ姿勢を長く続けないことや、適度な運動・体操を行うことを挙げています。日本整形外科学会「肩こり」

デスクワーク中は、次のような小さな工夫から始めてみましょう。

  • 定期的に椅子から立ち上がる

  • 首や肩を痛みのない範囲で動かす

  • 胸を軽く開いて深呼吸する

  • 短時間でも歩く

  • 座り直して姿勢を変える

  • 画面の高さや椅子の位置を調整する

「正しい姿勢を崩さないように頑張る」よりも、同じ場所へ負担が集中しないよう、こまめに姿勢を変えることが現実的です。

肩こり・腰のこりでお悩みの方へ

肩や腰のこりが長期間続いている場合、硬く感じる筋肉だけでなく、肩甲骨・胸郭・骨盤・股関節の動きや、姿勢を支える筋力が関係している可能性があります。

大島駅前サモーナスポーツ整骨院では、痛い場所やこりを感じる場所だけでなく、姿勢・柔軟性・筋力・全身の動きを確認し、一人ひとりの状態に合わせた施術と運動をご提案しています。

よくあるご質問

Q1.ストレートネックや猫背が肩こりの原因ですか?

頭が前へ出た姿勢や背中が丸い姿勢では、首・肩周辺の筋肉に負担を感じる方がいます。しかし、ストレートネックや猫背がある人すべてに肩こりが起こるわけではありません。

姿勢だけを原因と決めつけず、同じ姿勢が続く時間、肩関節の可動域、筋力、睡眠やストレスなども確認する必要があります。

Q2.肩こりから頭痛が起こることはありますか?

首や肩周辺の筋肉の緊張に伴い、締めつけられるような頭痛を感じる場合があります。ただし、片頭痛やほかの疾患による頭痛でも、肩こりを伴うことがあります。

「肩がこっているから頭痛が出た」と自己判断せず、頭痛の頻度や随伴症状を確認することが大切です。

Q3.天気が悪いと頭痛が出るのはなぜですか?

天候や気圧の変化によって頭痛が出ると感じる方はいますが、頭痛には体調、睡眠、疲労、ストレスなども関係します。

頭痛が繰り返す場合は、発生した日時、天候、睡眠時間、痛みの場所、吐き気の有無などを記録しておくと、医療機関へ相談する際に役立ちます。

Q4.マッサージだけで姿勢は改善しますか?

手技によって筋肉の緊張が軽減し、一時的に動きや姿勢が変化することはあります。しかし、その状態を維持するには、関節可動域、筋力、生活中の姿勢や活動量も関係します。

施術だけに頼るのではなく、自分の状態に合った運動やセルフケアを組み合わせることが大切です。

Q5.肩こりなのに骨盤や股関節も確認するのはなぜですか?

立つ、歩く、身体をひねるといった動作では、肩や首だけでなく、胸郭・骨盤・股関節が連動します。

骨盤や股関節が動きにくい場合、上半身がその動きを補う可能性があります。そのため、症状のある場所だけでなく、全身の動きを確認しています。

Q6.インナーマッスルを鍛えれば、肩こりや腰のこりを予防できますか?

体幹を安定させる運動は、姿勢や動作を支える方法の一つです。ただし、インナーマッスルだけを鍛えれば症状を予防できるとは限りません。

肩甲骨・股関節周辺の筋力、柔軟性、有酸素運動、仕事中の休憩なども含めて、継続可能な方法を選びましょう。

Q7.頭痛がある場合、すぐ病院へ行った方がよいですか?

次のような頭痛がある場合は、施術よりも医療機関の受診を優先してください。

  • 突然発症し、短時間で非常に強くなった

  • 今まで経験したことがない強い頭痛

  • 発熱を伴っている

  • 手足のしびれや麻痺がある

  • ろれつが回らない、意識状態がおかしい

  • 頭部をぶつけたあとから続いている

  • 時間の経過とともに悪化している

日本頭痛学会も、突然の激しい頭痛、発熱や手足の麻痺・しびれを伴う頭痛では、脳神経外科または脳神経内科の速やかな受診を勧めています。日本頭痛学会「頭痛とは」

※本記事は一症例の評価と経過を紹介したもので、すべての肩こり・腰のこり・頭痛に同じ施術が適しているわけではありません。施術による変化や感じ方には個人差があります。

この記事の執筆者:中澤 武士(なかざわ たけし)

保有資格:

  • 柔道整復師(国家資格)

  • NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)

  • NASM-PES(パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト)

  • 中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)

プロフィール:

スポーツ現場から医療分野まで幅広く携わる実践型トレーナー・施術者。

これまでに、大相撲の横綱をはじめとする幕内力士、新極真空手日本代表、プロボクサー、デフフットサル日本代表、競輪選手、実業団選手、市民ランナーなど多様な競技者をサポート。

施術による痛みの改善から競技復帰、さらにはパフォーマンス向上まで一貫したサポートを行うことを強みに、学生アスリートからトップ選手まで高い信頼を得ている。

現在は、江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」のエリアマネージャーとして、現場での施術・トレーニング指導に従事。スタッフ教育にも力を入れ、後進トレーナーの育成にも積極的に取り組んでいる。

区の行政事業における体操教室、トレーナー専門学校での学生教育、同業トレーナーへの指導、社内研修での講師など、教育・普及活動にも幅広く参加。

「根本改善・再発防止・パフォーマンス向上」を掲げ、身体の本質を見極める全身アプローチを信条に、多くの利用者が長く健康で動ける身体づくりをサポートしている。

この記事の監修者:鮫島 洋一(さめしま よういち)

保有資格:

  • 柔道整復師(国家資格)
  • 鍼灸師(国家資格)
  • あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
  • JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
  • NASMフィットネスエデュケーター

プロフィール:

メディカルトレーナーとして、甲子園大会や世界陸上など国内外のスポーツ現場に帯同。トップアスリートから成長期の学生アスリートまで、競技復帰・再発防止・パフォーマンス向上を見据えた施術・指導を行っている。

スポーツ障害に対する専門的な視点と、根本改善を重視した全身アプローチで、多くの競技者のサポートに携わってきた。

現在は江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」を運営し、地域の運動愛好家・学生アスリートからの信頼も厚い。また、トレーナー教育のための専門学校のコース長として教育の現場でも活躍している。