【症例報告】手が動かしにくい・字が書きにくい40代男性|頚髄症などを疑い医療機関への紹介を判断した症例
2026年09月30日

「最近、手が思うように動かない」
「ボタンを掛けにくくなった」
「字が書きにくく、紙もめくりにくい」
このような症状は、肩こりや手の疲れだけで起こるとは限りません。
特に、手先の細かい動作が徐々に難しくなり、さらに歩きにくさや上下肢の筋力低下などを伴っている場合には、頚椎や脊髄、末梢神経などを含めた神経系の評価が必要です。
今回は、江東区の大島駅前サモーナスポーツ整骨院に来院された40代男性の症例をご紹介します。
2日前に発症した腰痛で来院されましたが、詳しくお話を伺うと、約9か月前から右手の動かしにくさが続いており、現在ではボタン掛けや書字、紙をめくるといった細かな動作にも支障が出ていました。
身体評価でも上下肢の筋力低下や手指の巧緻運動障害を疑う所見が確認されたため、単純な腰痛として対応するのではなく、頚髄症をはじめとした神経疾患なども鑑別する必要があると考え、整形外科での精査をご案内しました。
40代男性|急な腰痛に加えて9か月前から右手が動かしにくい
来院時のお悩み
患者さんは40代男性です。
来院の2日前、明らかなきっかけなく急に腰痛が出現しました。
しかし、問診を詳しく進めていくと、腰痛以外にも気になる症状が確認されました。
約9か月前から右手が動かしにくくなり、現在では、
・ボタンを掛けられない
・字が書きにくい
・紙をめくりにくい
・全身の動きが鈍く感じる
など、日常生活にも影響が出ていました。
さらに体重が65kgから57kgへ減少していました。
今回の症例では、腰痛だけでなく、こうした症状を含めて身体全体を評価する必要があると判断しました。
手先の細かい動作ができない「巧緻運動障害」に注意
ボタンを掛ける、字を書く、紙をめくるなど、手指を細かく正確に動かす能力を「巧緻性」といいます。
この能力が低下した状態が巧緻運動障害です。
頚髄症では、手のしびれだけでなく、ボタン掛けや箸の操作、書字などの細かい動作が難しくなることがあります。
今回の患者さんでは、約9か月前から右手の動かしにくさが続き、現在では複数の日常動作に影響が出ていました。
そのため、筋肉の緊張だけではなく、頚椎・脊髄・末梢神経など神経系の問題を含めて考える必要がありました。
大島駅前サモーナスポーツ整骨院で行った身体評価
脊柱の動作評価
立位で前屈・後屈・回旋を確認したところ、いずれも可動域制限が強く、脊柱全体の動きが乏しい状態でした。
また、
トレンデレンブルグテスト:陽性
でした。
トレンデレンブルグテストは片脚立ちを行い、骨盤を安定させる筋肉の働きなどを確認する評価です。
腰部・下肢に対する理学検査
SLRテスト:陰性
SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、仰向けで脚を持ち上げ、腰から下肢へ向かう神経への負荷によって症状が再現するか確認する検査です。
FNSテスト:陰性
FNSテスト(大腿神経伸張テスト)は、大腿神経や上位腰椎神経根などへの負荷によって症状が再現するか確認します。
今回、これらの検査では明確な陽性所見は確認されませんでした。
頚椎・神経系に対して行った検査
ジャクソンテスト・スパーリングテスト
ジャクソンテスト:神経症状の誘発なし
スパーリングテスト:神経症状の誘発なし
ただし、どちらの検査でも脊柱周辺に痛みが出現しました。
ジャクソンテストやスパーリングテストは、頚部に負荷を加え、頚椎から上肢へ向かう神経根症状が誘発されるか確認する検査です。
今回は典型的な上肢への放散症状は確認されませんでしたが、これだけで頚髄やその他の神経疾患を否定することはできません。
モーリーテスト
モーリーテスト:陽性
モーリーテストは、鎖骨上部周辺を刺激した際に上肢へ症状が再現するかなどを確認する検査です。
今回、陽性所見が確認されました。
手指10秒テストで巧緻運動障害を評価
手指10秒テスト:陽性
手指10秒テストは、10秒間に手をできるだけ速く開閉し、手指の巧緻性を確認する検査です。
頚髄症などで手指の運動機能が低下している場合、開閉回数が低下したり、動作が不規則になったりすることがあります。
今回、日常生活で実際に「ボタンが掛けられない」「字が書きにくい」「紙をめくれない」という症状があり、手指10秒テストでも異常所見がみられたため、重要な評価所見として捉えました。
病的反射・腱反射を確認
病的反射
Hoffmann反射:陰性
Wartenberg徴候:陰性
また、
クローヌス:陰性
でした。
これらは脊髄や中枢神経系の障害を疑う際に確認する神経学的検査です。
今回、明確な陽性所見はみられませんでした。
ただし、これらが陰性だからといって頚髄症などを否定できるわけではありません。
病的反射だけではなく、手指の巧緻性、筋力、感覚、歩行、腱反射、画像検査などを総合して評価する必要があります。
深部腱反射
深部腱反射では、
上腕二頭筋腱反射:減弱
腕橈骨筋反射:減弱
上腕三頭筋腱反射:減弱
膝蓋腱反射:減弱
アキレス腱反射:減弱
と、上下肢ともに反射の減弱が確認されました。
典型的な頚髄症では病変より下位で腱反射が亢進することがありますが、今回の症例では上下肢で反射が減弱していました。
そのため、今回の所見を「典型的な頚髄症」と決めつけることはできません。
頚椎疾患だけでなく、末梢神経障害やその他の神経疾患なども含めた鑑別が必要と考えました。
上肢・下肢ともに筋力低下を確認
MMT(徒手筋力テスト)では、
右上肢の筋力低下
右下肢の筋力低下
が確認されました。
MMTは、身体の各筋肉がどの程度力を発揮できるか確認する評価です。
今回のように上肢だけでなく下肢にも筋力低下がみられる場合、局所的な筋肉の問題だけで説明せず、中枢神経・末梢神経を含めて原因を確認する必要があります。
大腿四頭筋・ハムストリングスの柔軟性低下
タイトネステストでは、
大腿四頭筋
ハムストリングス
に柔軟性の低下がみられました。
これらは腰部や骨盤の動きに影響する可能性がありますが、今回確認された手指の巧緻運動障害や上下肢筋力低下を、筋肉の硬さだけで説明することはできません。
体重65kgから57kgへの減少も重要な情報
問診では、体重が65kgから57kgへ約8kg減少していることも確認されました。
割合にすると、以前の体重から約12%の減少です。
体重減少が食事管理や運動などによる意図的なものなのか、それとも本人が意図していない減少なのかによって意味は大きく異なります。
特に意図しない体重減少の場合には、筋骨格系の問題だけでなく、内科的疾患を含めたさまざまな原因を確認する必要があります。
今回のように神経症状を疑う所見と体重減少が同時にみられる場合には、整骨院だけで経過を見るのではなく医療機関で原因を調べることが重要です。
今回「脊柱管狭窄症」と断定しなかった理由
今回の来院時情報では、頚部・腰部の脊柱管狭窄症も可能性の一つとして考えられました。
しかし、脊柱管狭窄症や頚髄症を確定するためには、症状や神経学的所見だけでなく、MRIなどによって実際に脊柱管や脊髄の状態を確認する必要があります。
今回特に重要だったのは、
・約9か月続く右手の動かしにくさ
・ボタン掛けができない
・字が書きにくい
・紙をめくりにくい
・手指10秒テストで異常所見
・右上肢の筋力低下
・右下肢の筋力低下
・全身動作の鈍化
・上下肢の腱反射減弱
・体重減少
といった複数の所見です。
これらを総合すると、単純な筋・筋膜性腰痛や姿勢の問題だけとして対応することは適切ではないと判断しました。
今回行った施術と施術直後の変化
医療機関への受診が必要であることを説明したうえで、今回の腰痛や身体機能に対して施術を行いました。
施術内容は、
骨盤矯正
ハイボルト施術
です。
腰部・股関節周囲へのハイボルト後
腸腰筋、腰椎周辺、中殿筋、仙腸関節周辺へハイボルト施術を行いました。
施術後の再評価では、片脚立位の安定性に変化がみられました。
頚椎・胸椎周辺へのハイボルト後
頚椎・胸椎周辺への施術後には、患者さんから「指が動かしやすい」という感覚の変化がありました。
斜角筋・小胸筋周辺へのハイボルト後
斜角筋・小胸筋周辺への施術後には、「手に力が入りやすくなった感じがする」との反応がありました。
ただし、ここが非常に重要です。
施術直後に手指の動かしやすさや力の入り方が変化したことは、神経学的疾患が否定されたことを意味しません。
症状の一時的な変化と、病態そのものの診断は分けて考える必要があります。
今回は整形外科での精査が必要と判断
患者さんの目標は、
「身体に何が起こっているのか分からないという不安を解消したい」
というものでした。
今回の症例では、そのためにも「施術を続けて様子を見る」だけではなく、医療機関で原因を確認することが重要です。
頚髄症などが疑われる場合、MRIは脊髄圧迫などを確認するために重要な画像検査となります。
また、今回の神経学的所見が典型的な頚髄症だけでは説明できない可能性もあるため、必要に応じて整形外科から神経内科などでの評価につながることも考えられます。
患者さんの都合上、10月4日に整形外科を受診できる予定とのことで、当院から紹介状を作成する方針としました。
ボタンが掛けにくい・字が書きにくい症状は放置しないでください
「最近、手先が不器用になった」
という症状を、年齢や疲労、肩こりのせいだと思ってしまう方もいます。
しかし、
・ボタンを掛けにくい
・箸を使いにくい
・字が以前より書きにくい
・鍵や小銭を扱いにくい
・手から物を落とすことが増えた
・歩きにくくなった
・階段が不安定になった
・手足の筋力が低下してきた
などの症状が進行している場合には、頚髄症をはじめとする神経疾患が隠れている可能性があります。
このような場合は、マッサージやストレッチだけで様子を見続けず、医療機関で原因を確認することが重要です。
大島駅前サモーナスポーツ整骨院が考える「施術より先に必要なこと」
整骨院では、すべての症状に対して施術を続けることが適切とは限りません。
身体評価によって、
「整骨院で対応できる可能性が高い状態なのか」
「画像検査や医師による診察が必要な状態なのか」
を判断することも重要です。
今回の症例では、施術後に一部の動作に変化がみられましたが、それ以上に重要だったのは、9か月続く巧緻運動障害や上下肢筋力低下などから、医療機関での精査が必要と判断したことです。
江東区・大島の大島駅前サモーナスポーツ整骨院では、痛みが出ている場所だけを見るのではなく、姿勢、関節可動域、筋力、神経学的所見、動作などを確認し、必要に応じて医療機関との連携を行っています。
手の動かしにくさ・頚髄症についてよくある質問
Q1. ボタンを掛けにくいのは頚髄症の症状ですか?
頚髄症では、ボタン掛け、箸の操作、書字など、手指の細かな動作が難しくなることがあります。
ただし、末梢神経障害や脳・神経疾患などでも似た症状が出る可能性があるため、症状だけで頚髄症と判断することはできません。
Q2. Hoffmann反射が陰性なら頚髄症ではありませんか?
いいえ。
Hoffmann反射などの病的反射が陰性でも、頚髄症を完全に否定することはできません。
症状、筋力、感覚、歩行、手指の巧緻性、その他の神経学的所見、MRIなどを総合して診断します。
Q3. 頚椎の脊柱管狭窄症はMRIで分かりますか?
MRIでは、脊柱管の狭窄や脊髄への圧迫、脊髄内部の変化などを確認できます。
頚髄症が疑われる場合には重要な検査の一つです。
Q4. 手の症状なのに脚の検査も必要ですか?
必要になることがあります。
頚髄は首から下の身体へつながる神経経路を含むため、頚髄に問題がある場合には手だけでなく脚の筋力や歩行、反射などにも変化が現れることがあります。
Q5. 施術で手が動きやすくなれば病院に行かなくても大丈夫ですか?
そうとは限りません。
施術後に症状が一時的に変化しても、脊髄や神経に病変がないことの証明にはなりません。
巧緻運動障害や筋力低下などが続いている場合には、医療機関で原因を確認することが重要です。
Q6. 体重減少も病院で伝えた方がいいですか?
はい。
特に意図せず体重が減少している場合は重要な情報です。
いつから、どの程度減少したのか、食欲や食事量に変化があるのかなども医師へ伝えてください。
Q7. どのような症状があれば早めに医療機関を受診すべきですか?
手足の筋力低下が進む、歩行が急に不安定になる、転倒が増える、手指の細かな動作が急速に悪化する、排尿・排便に新たな異常が出るなどの場合は、予定日を待たず早めに医療機関へ相談することが重要です。
まとめ|手の巧緻運動障害と筋力低下は「腰痛だけ」と考えないことが重要
今回の症例は、急性腰痛をきっかけに大島駅前サモーナスポーツ整骨院へ来院された40代男性です。
しかし問診・検査を進めると、約9か月前から右手の動かしにくさがあり、ボタン掛け、書字、紙をめくる動作などにも支障が出ていました。
さらに右上肢・右下肢の筋力低下、手指10秒テストの異常、上下肢の腱反射減弱、全身動作の鈍化、体重減少などが確認されました。
頚髄症や脊柱管狭窄症を含む脊椎疾患は可能性の一つですが、現在の情報だけで病名を確定することはできません。
そのため今回は、施術を継続することだけを目的とせず、整形外科で画像検査を含めた精査を受け、症状の原因を確認することを優先する方針としました。
大島駅前サモーナスポーツ整骨院では、身体の状態によっては「施術すること」だけでなく、「医療機関につなぐこと」も大切な役割だと考えています。
※本記事は大島駅前サモーナスポーツ整骨院で対応した一症例を、個人が特定されない形で紹介しています。記事内の情報だけで疾患を自己診断することはできません。手足の筋力低下や巧緻運動障害などがある場合には、医療機関で適切な評価を受けてください。
この記事の執筆者:中澤 武士(なかざわ たけし)
保有資格:
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柔道整復師(国家資格)
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NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
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NASM-PES(パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト)
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中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)
プロフィール:
スポーツ現場から医療分野まで幅広く携わる実践型トレーナー・施術者。
これまでに、大相撲の横綱をはじめとする幕内力士、新極真空手日本代表、プロボクサー、デフフットサル日本代表、競輪選手、実業団選手、市民ランナーなど多様な競技者をサポート。
施術による痛みの改善から競技復帰、さらにはパフォーマンス向上まで一貫したサポートを行うことを強みに、学生アスリートからトップ選手まで高い信頼を得ている。
現在は、江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」のエリアマネージャーとして、現場での施術・トレーニング指導に従事。スタッフ教育にも力を入れ、後進トレーナーの育成にも積極的に取り組んでいる。
区の行政事業における体操教室、トレーナー専門学校での学生教育、同業トレーナーへの指導、社内研修での講師など、教育・普及活動にも幅広く参加。
「根本改善・再発防止・パフォーマンス向上」を掲げ、身体の本質を見極める全身アプローチを信条に、多くの利用者が長く健康で動ける身体づくりをサポートしている。
この記事の監修者:鮫島 洋一(さめしま よういち)
保有資格:
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
- JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
- NASMフィットネスエデュケーター
プロフィール:
メディカルトレーナーとして、甲子園大会や世界陸上など国内外のスポーツ現場に帯同。トップアスリートから成長期の学生アスリートまで、競技復帰・再発防止・パフォーマンス向上を見据えた施術・指導を行っている。
スポーツ障害に対する専門的な視点と、根本改善を重視した全身アプローチで、多くの競技者のサポートに携わってきた。
現在は江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」を運営し、地域の運動愛好家・学生アスリートからの信頼も厚い。また、トレーナー教育のための専門学校のコース長として教育の現場でも活躍している。









