【症例報告】腕を上げると肩から上腕が痛む30代女性|胸郭出口症候群(過外転型)が疑われた症例
2026年09月28日

「腕を横から上げたり、後ろに開いたりすると肩から腕にかけて痛い」
このような症状があると、「肩関節を痛めたのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、腕を上げたときに出る肩から上腕の痛みは、肩関節だけが関係しているとは限りません。
頚部、鎖骨周辺、胸郭、肩甲骨、筋肉の柔軟性、さらに首から腕へ向かう神経や血管などが関係している場合もあります。
今回は、江東区の住吉駅前サモーナスポーツ整骨院に来院された、左肩を外転・外旋した際に肩から上腕に痛みが出ていた30代女性の症例をご紹介します。
検査では、肩関節のインピンジメントや頚椎由来の症状を確認する検査では明確な陽性所見がみられず、一方で胸郭出口周辺への負荷を確認する検査で陽性所見がみられました。
これらの結果から、胸郭出口症候群(過外転型)の関与を疑い、肩だけでなく頚部・胸郭・肩甲骨・体幹まで含めて施術を行った症例です。
30代女性|腕を外転・外旋すると肩から上腕に痛みが出る
来院時のお悩み
患者さんは30代の女性です。
主な症状は、左肩関節を外転・外旋した際に、左肩から上腕にかけて痛みが出ることでした。
外転・外旋とは、腕を横から上げながら後方へ開いていくような動作です。
こうした腕を挙げる動作で肩から腕に症状が出る場合、肩関節そのものだけでなく、頚椎や胸郭出口周辺も含めて評価する必要があります。
肩から上腕の痛みに対して行った身体評価
住吉駅前サモーナスポーツ整骨院では、痛みが出ている肩だけを見るのではなく、姿勢、関節可動域、筋力、柔軟性、動作などを確認しながら身体全体を評価しました。
立位姿勢・前屈動作の評価
FFD(指床間距離)は5cmでした。
FFDとは、立った状態から前屈し、指先と床までの距離を確認する評価です。
今回は指先から床まで約5cmの距離が残っていました。
FFDだけで今回の肩の痛みを説明することはできませんが、股関節や脊柱を含めた身体全体の柔軟性を把握する指標の一つとして確認しています。
下位交差症候群の傾向
立位姿勢では、いわゆる下位交差症候群と呼ばれる姿勢・筋機能のアンバランスがみられました。
下位交差症候群とは、股関節前面や腰部の筋肉が緊張しやすく、腹部や殿部の筋肉が十分に働きにくいなど、骨盤周囲に一定の筋機能の偏りがみられる状態を表す考え方です。
ただし、下位交差症候群が今回の肩の痛みの直接的な原因というわけではありません。
肩の症状であっても、骨盤、脊柱、胸郭、肩甲骨がどのように連動しているかを確認するため、全身評価の一つとして確認しました。
頚椎・肩関節・胸郭出口症候群を確認する理学検査
今回のような肩から上腕にかけての痛みでは、症状が出ている場所だけで判断せず、頚椎・肩関節・神経・胸郭出口周辺などを確認することが重要です。
頚椎から腕へ向かう神経の評価
ジャクソンテスト:陰性
スパーリングテスト:陰性
ジャクソンテストやスパーリングテストは、頚部に一定の負荷を加え、頚椎から腕へ向かう神経への刺激によって症状が再現されるかを確認する検査です。
今回は、これらの検査では症状は誘発されませんでした。
肩関節のインピンジメント・腱の評価
ニアーテスト:陰性
ホーキンステスト:陰性
ニアーテストとホーキンステストは、肩関節周辺の組織に負荷をかけ、肩峰下インピンジメントなどの可能性を確認するために用いられる検査です。
さらに、
スピードテスト:陰性
でした。
スピードテストは、上腕二頭筋長頭腱などへの負荷によって症状が誘発されるかを確認する検査です。
今回の評価では、これらの肩関節周辺の検査では症状が再現されませんでした。
胸郭出口症候群・過外転症候群を確認する検査
一方で、
ライトテスト:陽性
アレンテスト:陽性
という結果でした。
ライトテストは、腕を外転させた状態で胸郭出口周辺に負荷を加え、症状の再現や脈拍の変化などを確認する検査です。
今回の患者さんが実際に痛みを感じていた「肩関節の外転・外旋」という動作とも関連する所見がみられました。
ただし、ライトテストやアレンテストが陽性だからといって、胸郭出口症候群や過外転症候群と確定できるわけではありません。
誘発テストには偽陽性もあるため、実際の症状、症状が出る姿勢、神経学的所見、肩関節や頚椎の検査などを組み合わせて総合的に判断する必要があります。
今回の症例では、
・左肩の外転・外旋で肩から上腕に痛みが出る
・ジャクソンテスト、スパーリングテストが陰性
・ニアーテスト、ホーキンステストが陰性
・スピードテストが陰性
・ライトテスト、アレンテストが陽性
という結果を総合し、胸郭出口周辺、特に腕を挙げた際に小胸筋周辺への負荷が高まる「過外転型」の関与を疑いました。
小胸筋・広背筋の柔軟性を評価
筋肉の柔軟性を確認したところ、
広背筋、小胸筋にタイトネスがみられました。
小胸筋は胸郭から肩甲骨の烏口突起につながる筋肉です。
腕を上げる際には上腕骨だけでなく肩甲骨も連動して動く必要があるため、小胸筋や広背筋の柔軟性は肩の挙上動作を評価するうえで重要なポイントになります。
また、小胸筋の深部には腕へ向かう神経や血管が走行しているため、今回のように腕を挙げた際に症状が出るケースでは確認しておきたい部位の一つです。
腸腰筋・中殿筋の筋力を評価
MMT(徒手筋力テスト)では、
中殿筋:4
腸腰筋:4
でした。
MMTとは「Manual Muscle Testing」の略で、筋肉がどの程度力を発揮できるかを評価する方法です。
今回は肩の症状ですが、立位姿勢や体幹・骨盤の安定性なども含めて身体全体を確認するため、股関節周囲の筋機能についても評価しました。
ただし、中殿筋や腸腰筋の筋力が低下していたから肩が痛くなった、と直接結びつけるものではありません。
あくまで全身の機能を把握するための評価の一つです。
骨盤・身体の左右差を評価
アライメント評価では、
右短下肢傾向
がみられました。
この所見についても、「右脚が短いから左肩が痛くなった」という意味ではありません。
骨盤から脊柱、胸郭、肩甲骨までの身体全体のバランスを確認するための一つの情報として評価しています。
今回の肩から上腕の痛みに胸郭出口が関係していると考えた理由
胸郭出口とは、首から腕へ向かう神経や血管が通過する領域です。
この周辺では主に、
・斜角筋周辺
・第1肋骨と鎖骨の間
・小胸筋周辺
などを神経や血管が通過します。
胸郭出口症候群は、この領域で腕神経叢や血管に負荷が加わることで、腕や手の痛み、しびれ、重だるさなどが現れる状態の総称です。
そのなかでも、腕を大きく挙げることで小胸筋周辺への負荷が高まり症状が誘発される状態は、従来「過外転症候群」と呼ばれてきました。
今回の症例では、
肩関節外転・外旋で症状が出ること
に加えて、
ライトテスト・アレンテストが陽性
小胸筋・広背筋にタイトネスがみられたこと
などから、肩関節そのものだけではなく、胸郭出口周辺の関与を考えました。
住吉駅前サモーナスポーツ整骨院で行った施術
今回の身体評価をもとに、以下の施術を行いました。
・骨盤矯正
・ハイボルト施術
・手技療法
・肩甲骨周囲へのアプローチ
痛みの程度については、PS(Pain Scale:痛みの程度を数値化した指標)を用いて施術前後で確認しました。
骨盤矯正後の変化
PS10 → 8
身体全体のアライメントを考慮し、骨盤周囲への施術を行いました。
腸腰筋・中殿筋へのハイボルト施術後
PS8 → 6
腸腰筋・中殿筋周辺へハイボルト施術を行い、再評価しました。
上肢へのアプローチ後
PS6 → 3
上肢への施術後、肩関節外転・外旋時の痛みはさらに軽減しました。
斜角筋・小胸筋へのハイボルト施術後
PS3 → 1
胸郭出口周辺との関連を考え、斜角筋・小胸筋周辺へアプローチしました。
肩甲骨・広背筋・小胸筋・頚部への手技後
PS1 → 0
最後に、肩甲骨周囲、広背筋、小胸筋、頚部への手技療法を行いました。
施術直後の再評価では、来院時にみられていた肩関節外転・外旋時の痛みはPS10から0まで変化しました。
ただし、これはあくまで初回施術直後の変化です。
施術直後に痛みがなくなったことと、症状そのものが治癒したことは同じではありません。
今後、日常生活で同じ症状が再現するかどうかを確認していく必要があります。
今後は姿勢・肩甲骨・胸郭・体幹機能まで評価
患者さんの目標は、
「日常生活での不安をなくすこと」
そして、
「姿勢を改善すること」
です。
今回は単発での施術となり、次回来院時には楽トレによる体幹筋機能の検査を予定しています。
今後は症状の経過に合わせて、
・肩関節外転・外旋時の症状
・しびれや感覚異常の有無
・胸椎の可動性
・肩甲骨の動き
・小胸筋、広背筋の柔軟性
・頚部周囲の筋緊張
・上肢の神経学的所見
・体幹機能
などを確認することが重要です。
施術によって一時的に症状を軽減させるだけではなく、最終的には日常生活で腕を動かすことへの不安を減らすことを目指します。
腕を上げると肩や腕が痛い場合は「肩だけ」が原因とは限りません
「腕を上げると肩から腕にかけて痛い」
という症状があっても、必ずしも肩関節だけに問題があるとは限りません。
肩関節周囲の組織だけでなく、
・頚椎から出る神経
・胸郭出口周辺
・肩甲骨の動き
・胸椎の可動性
・筋肉の柔軟性
・腕を使う姿勢や生活習慣
など、さまざまな要素が関係している可能性があります。
特に、
腕を上げ続けると肩や腕が重だるくなる
つり革やドライヤーなど腕を上げる姿勢がつらい
肩から腕、手にかけて痛みやしびれがある
腕を下ろすと症状が軽くなる
といった場合には、肩関節だけでなく胸郭出口周辺も評価する必要があります。
腕のしびれ・冷感・腫れがある場合は医療機関の受診を
胸郭出口症候群には、主に神経への負荷が関係するタイプだけでなく、静脈や動脈など血管への負荷が関係するタイプもあります。
そのため、
・腕や手が明らかに腫れている
・手や腕の色が青白い、紫色になる
・左右で明らかな冷感の違いがある
・強いしびれや感覚低下がある
・握力や手指の筋力低下が進行している
・手の筋肉が痩せてきた
などの症状がみられる場合には、整形外科などの医療機関での評価を優先してください。
江東区・住吉で肩から腕の痛みにお悩みの方へ
江東区の住吉駅前サモーナスポーツ整骨院では、肩が痛いからといって肩だけを施術するのではなく、姿勢、関節可動域、筋力、柔軟性、肩甲骨や胸郭の動きなどを確認しながら身体を評価しています。
今回のような「腕を上げると肩から上腕が痛い」という症状でも、その背景は一人ひとり異なります。
肩関節が関係する場合もあれば、頚部や胸郭出口、筋肉の柔軟性、肩甲骨の動きなど複数の要素が関係している場合もあります。
症状が続いている場合には、「肩が凝っているだけ」と自己判断せず、どの動作で症状が出るのか、神経症状を伴っていないかなどを含めて身体の状態を確認することが大切です。
胸郭出口症候群・過外転症候群についてよくある質問
Q1. 過外転症候群とはどのような状態ですか?
腕を大きく挙げた姿勢などで、小胸筋周辺を通る神経や血管への負荷が高まり、肩や腕、手などに痛み、しびれ、重だるさなどが現れる状態を指します。
胸郭出口症候群に関連する病態の一つとして考えられています。
Q2. 胸郭出口症候群ではどんな症状が出ますか?
肩から腕、手にかけての痛み、しびれ、重だるさなどがみられることがあります。
腕を上げ続ける姿勢で症状が出やすくなるケースもありますが、症状の出方には個人差があります。
Q3. ライトテストが陽性なら胸郭出口症候群ですか?
ライトテストが陽性というだけで胸郭出口症候群と確定することはできません。
実際の症状、症状が再現される姿勢、神経学的所見、その他の誘発テスト、頚椎や肩関節の評価などを組み合わせて判断する必要があります。
Q4. 姿勢が悪いと胸郭出口症候群になりますか?
姿勢だけを原因と断定することはできません。
胸郭や肩甲骨の位置、筋肉の柔軟性、腕を使う時間、仕事やスポーツでの身体の使い方など、複数の要素が関係している可能性があります。
Q5. 腕を上げると肩が痛いのは五十肩ですか?
必ずしも五十肩とは限りません。
腱板、肩峰下組織、上腕二頭筋腱、頚椎から出る神経、胸郭出口などでも腕を上げた際の症状が現れる可能性があります。
そのため、痛みが出る場所だけでなく、どのような動作で症状が出るのかを確認することが重要です。
Q6. 胸郭出口症候群はマッサージだけで改善しますか?
筋肉の緊張が関係している場合には、筋肉へのアプローチによって一時的に症状が変化するケースがあります。
しかし、胸郭・肩甲骨の動きや筋機能、生活や仕事での腕の使い方などが関係している場合には、それらを含めて評価することが重要です。
Q7. 胸郭出口症候群で病院を受診した方がよい症状はありますか?
腕や手の著しい腫れ、皮膚色の変化、冷感、進行する筋力低下、筋萎縮、強いしびれや感覚低下などがある場合には、神経や血管の状態を確認するため医療機関の受診を優先してください。
まとめ|肩から腕の痛みは肩関節だけでなく胸郭出口まで評価することが重要
今回の症例では、30代女性が左肩を外転・外旋した際に、肩から上腕にかけて痛みが出ることを主訴に来院されました。
頚椎神経根や肩関節周囲を確認する複数の検査では明確な陽性所見がみられず、一方でライトテスト・アレンテストでは陽性所見がみられました。
さらに小胸筋・広背筋のタイトネスなども確認されたことから、肩関節そのものだけではなく、胸郭出口症候群のうち過外転型の関与を疑い施術を行いました。
施術直後には、肩関節外転・外旋時の痛みがPS10から0まで変化しました。
ただし、これは初回施術直後の結果であり、症状の治癒を意味するものではありません。
今後は日常生活で症状が再現するかを確認しながら、肩だけに原因を求めるのではなく、頚部・胸郭・肩甲骨・体幹などを含めた身体機能を評価していくことが重要です。
江東区・住吉周辺で、腕を上げたときの肩や腕の痛み、しびれ、重だるさなどにお悩みの場合は、症状が出ている部分だけではなく身体全体の状態を確認することをおすすめします。
※本記事は住吉駅前サモーナスポーツ整骨院で実際に対応した一症例をもとに、個人が特定されない形で紹介しています。症状や身体機能、施術による変化には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。
この記事の執筆者:中澤 武士(なかざわ たけし)
保有資格:
-
柔道整復師(国家資格)
-
NSCA-CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
-
NASM-PES(パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト)
-
中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)
プロフィール:
スポーツ現場から医療分野まで幅広く携わる実践型トレーナー・施術者。
これまでに、大相撲の横綱をはじめとする幕内力士、新極真空手日本代表、プロボクサー、デフフットサル日本代表、競輪選手、実業団選手、市民ランナーなど多様な競技者をサポート。
施術による痛みの改善から競技復帰、さらにはパフォーマンス向上まで一貫したサポートを行うことを強みに、学生アスリートからトップ選手まで高い信頼を得ている。
現在は、江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」のエリアマネージャーとして、現場での施術・トレーニング指導に従事。スタッフ教育にも力を入れ、後進トレーナーの育成にも積極的に取り組んでいる。
区の行政事業における体操教室、トレーナー専門学校での学生教育、同業トレーナーへの指導、社内研修での講師など、教育・普及活動にも幅広く参加。
「根本改善・再発防止・パフォーマンス向上」を掲げ、身体の本質を見極める全身アプローチを信条に、多くの利用者が長く健康で動ける身体づくりをサポートしている。
この記事の監修者:鮫島 洋一(さめしま よういち)
保有資格:
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
- JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
- NASMフィットネスエデュケーター
プロフィール:
メディカルトレーナーとして、甲子園大会や世界陸上など国内外のスポーツ現場に帯同。トップアスリートから成長期の学生アスリートまで、競技復帰・再発防止・パフォーマンス向上を見据えた施術・指導を行っている。
スポーツ障害に対する専門的な視点と、根本改善を重視した全身アプローチで、多くの競技者のサポートに携わってきた。
現在は江東区エリアにて「サモーナスポーツ整骨院」「パーソナルトレーニングジム サモーナ」を運営し、地域の運動愛好家・学生アスリートからの信頼も厚い。また、トレーナー教育のための専門学校のコース長として教育の現場でも活躍している。









